第73話

「てか、そういうんじゃねえし、ただ…、」



「苦手、なの?」



「違う!……ただ、こういう暗くて閉じ込められた空間は好きじゃねー、んだ…」



顔を上げないままそれを言うコノエくんに、「そう」と。




「それはあたしにとって、とても好都合だけど…、」



「え?」



「だって、コノエくんの逃げ場はもうない、ということでしょう?」



「は、」



コノエくんが乾いた声を上げた。


その表情はきっと顔面蒼白に違いない。暗くてよくわからないけれど。



それでも彼はきっと、しまったと思っただろう。


コノエくんにとってのあたしは、〝いつもの〟あたしではないのだ。





ブレザーを脱いで、あたしはコノエくんを見る。



彼は、「はっ!?え、なにする気!?」とかなりビクついた様子で、勢い良く棚の方へ下がって行き、そのまま背中をぶつけた。



から、上からぐらり、と。


こちら側からは、何かが落ちてくるのがはっきりと見えた。




「危ないっ!!」



「え、」



咄嗟に駆け寄って、そのしゃがみ込んでいる身体を庇う。

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