第19話

くるり、と身を翻し、半回転する彼女は、リュウくんを見つめる。



その何気ない彼女の言葉に、リュウくんの眉はぴく、と動いた。



その反応に、彼女はくす、と笑う。





「ねえねえ、ホントーに気づかない?」




後ろで手を組み、これ以上ないってくらい可愛く上目遣いをする彼女に、リュウくんは「なにが?」といつものように、にこやかに返すから。



彼女はほんの少し不愉快そうに鼻を鳴らすけれど、すぐさま取り繕うようににっこりと笑顔を浮かべた。






「―――おい、リュウもう行くぞ」



トラくんが、呼びかける。



それに気づいた彼女は「あ!」と。



「くにきー、…えと、なんだっけ?かげ、とら?だっけ。確か。マツキタの」



思い出すようにそう言って、腕を組む。


トラくんは、顔を顰めて、訝しむようにこちらを見た。





「ああ、やっぱりそうだ!」



顔をしっかりと見て、確信したのか。


彼女はぽん!と手を叩く。



漂う空気とは裏腹に、彼女の声は実に元気だ。




怖いくらいに、からっとしている。

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