第73話
潮風が涙を乾かし、
涙で濡れていた頬がひんやりとする。
さっきまで遠くで聞こえていた声も次第に少なくなり、
波の音だけが静かに響き渡っていた。
なぜかさっきウタとした線香花火がポトリと落ちる光景が頭にぼんやりと浮かぶ。
まだ目の奥が熱い…。
生ぬるい風が吹き抜ける夏の夜、
少しだけ冷えた体に繋いだ手だけが温かかった。
「恋って難しいね。」
美嘉の問い掛けに、
「そうやな。」
と優は答える。
「でも好きになる気持ちはみんな同じだよね。」
「ほんまやな。」
二人はそれぞれにいろんな想いを抱えていた。
口には出さないけど、
なんとなく同じことを考えているような気がするんだ…。
【美嘉は優さんと幸せになるんだよ】
さっきアヤが言った言葉が心の奥に引っ掛かっていて、
いつか来るかもしれない“別れ”に強い不安を感じ、優の手を強く握りしめた。
体を起こし優の肩に寄り掛かると、
優は美嘉の肩をそっと抱き寄せた。
この先何があるかわからない。
優もヒロのように突然去って行くかもしれないし
ケンちゃんみたいに元カノが現れたらそっちを選ぶかもしれない。
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