夜空に入る一つの星~残酷な階級社会である陰陽師が幅を利かせる近未来の終末世界でスラムの少年が世界を見返すらしいですよ?~
リヒト
スラム
「おっぱい揉みてぇぇぇぇええええええっ!」
遥か昔、紀元前からこの世界に存在していた人類の敵、『魔』。
魔の多くは謎に包まれており、科学では説明できない特殊能力を持っている。彼らの行動原理はただひとつ、人類を襲うことだけだ。
そんな魔に対して、人類は長い間、争い続けていた。
強力な力を持つ魔に対して、人類も人類で魔物の特殊能力を参考にして作り上げた奇跡の力でもって対抗し続けていた。
そんな彼ら、彼女らの呼び名はその土地、その時代によって様々である。
そのような中で、とある極東の地では昔より陰陽師と呼ばれており、陰陽術と呼んでいる奇跡の力を駆使して魔と戦い続けていた。
そんな陰陽師たちの戦いは表舞台ではなく裏の世界で行われていた。
一般の人々には知られず、陰陽師たちは密かに魔と戦い続けていた。
しかし、そんな時代は過ぎ去り、魔の力が抑えきれなくなった現在、世界は荒廃し、多くの人々が厳しい生活を強いられていた。
陰陽師を初めとする人類の奮闘も空しく、魔との戦いで人類は致命的な敗北を喫したのだ。
地上にはとうとう抑えきれなくなった魔があふれ出し、多くの、ありとあらゆる産業が致命的なダメージを負った。
治安は荒れ果て、地上には人類を貪り食らう魔たちが闊歩するような世紀末。
そのような中でもしっかりと人類は文明を維持し、豊かな生活を送っている人もいるが……。
「おっぱい揉みてぇぇぇぇええええええっ!」
世界の底辺で『おっぱいを揉みたい』などと天にまで叫んでいる俺はその例に入っているはずもねぇ。
「あぁー、金が欲しい。お肉食べてお魚食べて綺麗な白米も一緒に口の中にかき込む贅沢を堪能し、夜は隙間風の入らない屋根と壁を備え付けた家で多くのおっぱいに囲まれながら一夜を明かしたい」
外に出ると、ゴミの山が広がり、家もなく地面に転がっているホームレスたちが目につく。道には打ち捨てられた死体がありふれた光景だ。
俺の家も実にひどい場所である。天井にも、壁にも小さな穴が開いており、隙間風が容赦なく入ってくる。
家具と言えるものは何もなく、汚れてボロボロになったカーペットと壊れかけのローテーブルが一つあるだけだ。
だが、孤児として生まれた身で自身が住み着ける居場所を見つけられたこと自体が奇跡のようであり、俺はこれでもなお幸運の身なのである。
悲しいことではあるがな。
「さて、と」
自分の悲しい現状を振り返っても空しいだけだ。俺にはやるべきことがある。
「あぁ……今日はご飯見つけられるかねぇ?」
金もない、食料を育てられる土壌もない、まさに何もない尽くめ。
今日食べられるものを見つけられるかどうかもギリギリの生活を俺はしているのだ。
「よし、行くかぁ」
今日も俺は自分の飯の調達のためにボロボロの家を出るのだった。
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