第6話

 ラクダが目を閉じた。

 その頬を伝って、一粒二粒こぼれ落ちる。


「そうだね。わかった」


 そう聞こえた。

 それは、僕に向けた彼女の心の声だったのだろうか。

 

 が、それを確かめる術はもうなかった。


 彼女の言葉を聞き届けてヒロノが頷き、やがて風に吹かれるまま教室の外へ出ていったように、彼女は身支度をしてまもなくいなくなり、僕もまたそのまま溶けるように消えていったからである。





(了)

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こころのこる 悠真 @ST-ROCK

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