ヤンデレ姉妹達のいる日常第二章二話
「ここか……」
翌日、携帯のメッセージに送られてきていた目的地に着くとまだ彼女は着ていないみたいだった。俺は彼女が現れるまで待ち合わせ場所で待つことにした。
「お待たせしました」
俺が到着して数分、待ち合わせ場所に彼女が息を切らしながら現れた。
「早いね、まだ時間には早いと思うけど」
「はぁはぁ、ちょうどこの近くで仕事をしていたので。でも、こちらからお呼びしたのにお待たせしてしまって申し訳ありません」
「そんなのいいって、俺が勝手に早く来てしまっただけだから。それで陽菜ちゃん俺に用事って言うのは……?」
俺にメッセージを送ってきたのは前に俺が助けた事があるアイドルグループ夜鴉に所属している陽菜ちゃんという女の子だった。
姉妹達に出くわしたあの日。俺が陽菜ちゃんに電話をしても繋がらず、メッセージを送っても既読がつくことはなかった。だが、昨日いきなり陽菜ちゃんからメッセージが届いた。
「えっと、その話はお店に入ってからしてもいいですか?この先に美味しい個人経営しているケーキ屋さんがあるんです」
陽菜ちゃんに言われて、陽菜ちゃんに案内されて着いたのはテレビやネットで話題になり俺ですら知っている程の人気のケーキ屋さんだった。
「いらっしゃいませ」
「あの、
「はい、春夏様ですね。お待ちしておりました、どうぞこちらへ」
どうやら陽菜ちゃんはこのケーキ屋さんを予約していたらしい、確かネットではこのケーキ屋はテイクアウトできない代わりに店で食べる事ができるのだが人気過ぎて半年先まで予約が埋まっているというのを見た事があった。
「それではごゆっくりお過ごしください」
個室に案内されて、俺と陽菜ちゃんは向かい合わせで席に座る。
「話の前にケーキを注文しましょうか、ここのケーキ屋さんチョコレートケーキが一番人気みたいで」
「そうなんだね」
机に置かれていたメニューを開くケーキの値段を見て驚いてしまう、陽菜ちゃんが言っていた一番人気のチョコレートケーキは一個三千円と書かれていた。チョコレートケーキ以外のケーキも一個二千円〜三千円。一番高いケーキは一個一万円もした。
「それじゃあ、俺はこのモンブランにしようかな」
メニューに載っていたケーキの中でも一番比較的に安かったモンブランが一個千五百円だったので俺はモンブランを注文する事にした。
「モンブランだけでいいのですか?ここは私が支払うので他にも注文してもらってもいいのですが」
「いや、年下の子に支払ってもらうなんて悪いよ自分の分は自分で払うから」
「そうですか?だったら私は」
「お待たせしました」
個室の扉が開いてケーキ屋の店員が注文したケーキを運び込んでくる。
「チョコレートケーキ、ショートケーキ、チーズケーキ、イチゴタルト、モンブラン、フルーツタルト、シフォンケーキ……」
他にも続々とケーキが運び込まれる。
「えーご注文のケーキは全てですが……本当にお間違いなかったでしょうか」
「はい、全部揃ってます。ありがとうございます」
陽菜ちゃんはこのケーキ屋さんのケーキメニューを全て注文して約五十種類近くのケーキが机の上に並べられた。
「それでは失礼いたします」
頭を下げてケーキ屋の店員さんは出ていく。
「いただきましょうか」
「う、うん。そうだね」
本当にこのケーキの量を一人で食べ切れるのか俺は信じられずにいたのだが杞憂に終わる。
僅か三十分程で、陽菜ちゃんは五十種類近くあったケーキを食べ切った。俺は信じられずにいた僅か三十分程で五十種類近くのケーキがあのお腹の中にある事に。
「やはり甘い物はいいですね、仕事で疲れた体に染み渡ります」
「あの、それで俺に用事があるとかで」
陽菜ちゃんは食後の紅茶を頼んでいてケーキを食べ終わり、届けられたティーカップに入った紅茶を飲んでいる。俺はようやく陽菜ちゃんと落ち着いて話ができそうだった。
「そうでした。えっと、この話断ってくれてもいいのですが。単刀直入に言いますね、私達の所属するアイドルグループ夜鴉のマネージャーになってはくれないでしょうか?」
「え……?」
陽菜ちゃんの言葉に驚いてしまい俺は陽菜ちゃんに説明を求めた。
「つまり、この一ヶ月間の間で夜鴉のメンバーがストーカー被害にあってるから俺にマネージャー兼ボディガードになってくれと」
「はい、最近メンバーの数人がストーカー被害にあっていて、私を助けてくれた時。あなたの動きはとても素人の動きではない気がして、それにどうもストーカー行為をしているのは私達に詳しくて近しい人物らしくて」
「それなら警察に相談した方が……」
「警察にも相談はしたんですけど、中々取り合ってもらえず。それにこのストーカー行為が続いたら休止するかもって話もでていて」
「それでなんで俺を頼ったりするのかな?そんな動きだけならもっと他にも……」
「それは……あなたといると安心したからです」
「安心……?」
「それにできる限り信用できる方がいいので、だから、あの日私を助けてくれたあなたに相談したんです。あ……私これでも夜鴉のリーダーなので。メンバー達にも相談してみたら、私が認める人ならいいと言ってもらっているので」
ここまで俺の事を頼ってくれるのは少し嬉しい。だがどうしたらいいか迷っていた、多分この話を姉妹達にしたら全力で止めるだろう。姉妹達は俺が危険な目に合うのをとても嫌がる。
「えっとこの話、断ってもいいんだよね?」
「はい、先に話した通り。この話は断ってくれても構いません」
だったらここは断る方がいいか。
「悪いけど……」
断ろうと言いかけた瞬間、ポケットに入れていた携帯が震える。こんな時に誰からの電話なのかポケットから出して確認すると二海華からであった。
「電話なら全然でてもらっても構いませんよ」
「ごめん、もしもし二海華か」
陽菜ちゃんもいいと言ってくれたので俺はその場で電話にでる。
「もしもし、お兄様ですか?」
「ああ、どうしたんだ二海華」
「いえ、お兄様。家をでる時に財布を忘れていきませんでしたか……?」
「え……そんなはずは」
出かける時いつも財布は出かけ用のショルダーバックに入れていて二海華に言われたのでショルダーバックを開けて確認するが財布は入っていなかった。
「二海華、またあとでかけ直すよ」
問題が発生してしまった、俺は今財布を持っていない。ポケットを確認しても小銭すら入っていない、だけど俺はさっき千五百円のモンブランを食べてしまった。
「陽菜ちゃん……」
「はい、なんでしょうか……?」
「さっきの話は受けるから、ここの代金支払ってくれないかな。俺財布忘れちゃったみたいで」
このまま財布を忘れた事を黙っていても仕方ないので、俺は陽菜ちゃんに財布を忘れた事を正直に話した。
「では、明後日からお願いしますね。零夜さん」
その後、陽菜ちゃんと話した俺はアイドルグループ夜鴉のマネージャー兼ボディガードの仕事をする事が正式に決定した。
「うん、よろしく陽菜ちゃん」
陽菜ちゃんと握手を交え、陽菜ちゃんは仕事の途中で休憩中に抜け出してきたのでそのまま急いで仕事に戻るようだったのでケーキ屋の前で別れる。そして俺はどうやってこの事を姉妹達に伝えるか悩んでいた。
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