第二章、アイドルグループ夜鴉のマネージャーになる
ヤンデレ姉妹達のいる日常第二章一話
あれから一週間、終業式の日に担任から橘睡蓮は急遽両親の都合によってまた海外に行く事になってしまったと伝えられた。
俺はあの日の内に睡蓮から謝罪文のメッセージが送られてきていた。俺は気にするなと一言だけ返信したが、あの日以降睡蓮からメッセージもなければ通話すらしていなかった。
そして変わったと言えばもう一つ、俺は夏休みに突入していて部屋で夏休みの課題をしているのだが。
「零夜お兄様、そこの計算合ってはいますがもっと簡単に計算できますよ」
「そうなのか?教えてくれてありがとう」
ニコニコと微笑んで俺の勉強している所を指摘してきた。
「……」
「……」
「二海乃姉さん、またお兄様の部屋に勝手に入ってお兄様の邪魔をしているのですか」
一瞬無言になる部屋の中だったが、部屋の扉が突然開かれて、二海華が現れる。
「いやいや、人聞きの悪い。部屋の扉の隙間から零夜お兄様が勉強しているのが見えたから、私は少しアドバイスしてあげただけだよ」
「お兄様、二海乃姉さんが言っているのは本当の事ですか……?」
「まぁ、確かに彼女のアドバイスは的確だから俺でも分かりやすく解けている」
「お兄様がそう言うのであれば……ですが二海乃姉さん。もし今度またお兄様を連れ去ろうなんて考えたなら」
「大丈夫、大丈夫。もうそんな事しないから安心してよ、それより二海華。早くお昼作ってくれない、私お腹空いちゃった」
ぐぅぅぅと二海乃の腹の音が部屋中に響きわたる。二海華ははぁぁと溜め息を吐きながらも分かりましたと言って大人しく部屋から出ていく。
もう一つ変わったというのは、この子二海乃の事だ。先日俺を連れ去り計画は失敗していたと思っていたが、二海乃の計画は俺達が知らない間に成功していたらしい。
三日程前の事だった、母さんと父さんが重要な事があると俺と姉妹達全員をリビングに集めた。そして集められた俺達の視線は父さんでも母さんでもない別の人間に視線が一箇所に集まる。
「みんなに紹介したい、今日から新たに家族の一員となった九重二海乃さんだ」
「どうも初めまして、九重二海乃です」
「二海乃さんは母さんの血の繋がった本当の娘なのだが、実の父親が数年前から行方をくらましてしまったらしくてな。行く当てもないらしくて心配になった母さんに相談されて私達の養子として迎えいれた」
「ふーん、本当の狙いはそっちだった訳ね。まさかお母さんを丸め込むなんて」
「一体何の事でしょう……?」
一翠姉さんからの問いかけに二海乃はニコニコと微笑んだ顔でとぼけた様子で答える。
その日は二海乃の歓迎会を行う為に外食にしようと父さんが言い出した。二海乃の歓迎会は和やかな雰囲気で姉妹達も二海乃の事を受け入れている様子だった。俺も少し安心していた。二海乃の歓迎会が終わり父さんと母さんは外食から帰る直前に仕事が入って会社に行く事になってしまった。
父さんと母さんがいなくなりながらも外出先だからなのか、静かだった姉妹達だったのだが。家についてリビングに入るとさっきの和やかな雰囲気は嘘のように姉妹達は二海乃の事を囲った。
「怖いですね、この家では新しい家族にこんな事をするんですか」
姉妹達は二海乃をリビングの椅子に縛り上げて逃げられないようにしていた。
「それであなた本当の狙いは成功したみたいね」
「はい、零夜お兄様の妹になる。それが私の狙いでしたから」
「つまり二海乃姉さんが、お兄様を連れ去ったのは」
「あれはあなた達が零夜お兄様の為ならどこまでできるか試しただけ」
「私達がお兄様の為にどこまでできるか……?」
「そうあなた達の本気が零夜お兄様を守る事ができるか、私はずっと気になっていた。けど今回でよく分かった」
「私達がおにいの事を守れなかったらどうしてた訳……?」
「それは……本気で姉妹には全員消えてもらって、私だけ零夜お兄様の妹になる予定だったけど」
「椅子に縛り上げられているのに、よくそんな事言えるね」
「え……?これで縛り上げているつもりなの?」
二海乃を縛り上げられていた縄が外れていて、二海乃の体は自由になった。
「なんで……?」
「数年前に拘束術って言う本を読んで大抵の拘束は理解したからこんな縄の結び方じゃ簡単に抜ける事ができるんだよね」
「つまり零夜の妹になる事。そして私達が本気で零夜を守る事ができるかがあなたの狙いはそれだった」
「まぁ、そうですね」
「それで私達はあなたのお眼鏡にかなったりしたのかしら?」
「ええ、あなた達がいれば。零夜お兄様が危険な目に合う事は二度とないと思います」
「そう、それじゃあ。これからよろしくね、二海乃ちゃん」
「よろしくお願いします、一翠さん」
一翠姉さんと二海乃は握手をする。正直一翠姉さんが二海乃の事を認めたのかは分からないが一翠姉さんのあとに他の姉妹達も二海乃と握手をする。
「二海華もこれからよろしくね」
「よろしくお願いします、二海乃姉さん」
二海乃が家族の一員となってまだ三日しか経っていない。しかも二海乃はこの三日間、毎日俺の部屋に出入りしている。
「二海乃姉さんお昼ができましたよ」
二海華が部屋の扉を開けてお昼ができた事を二海乃に知らせにきた。
「ありがと二海華、まさか二海華がこんな家事ができる立派な妹になるとは私も思ってなかったわ」
二海乃は二海華の頭を優しく撫でてあげる。
「止めてください、私はまだ二海乃姉さんの事を認めてたりなんてしてませんから」
二海華は頭を撫でていた二海乃の腕を止める。
「残念だな、そうだ二海華。今度さ昔みたいに一緒にアイスクリームを食べようよ」
「アイスクリーム?」
「そうそう、昔は二海華アイスクリーム大好きだったでしょ」
そう言えば、この二人は元々双子の姉妹だったな。けど、二海乃と病室で出会った時に二海華の名前を出したら恨んでいる様子だったと五叶から聞いていたのだが。今ではそんな様子は一つもない。
「それは昔の事でしょう」
「いいから、いいから。この近くにアイスクリームの美味しいお店ができるって、ネットに書いてあったから。確か今週末オープンだったし一緒に行こうね二海華」
二海乃は二海華の事を強引に誘う。
「分かりました。今度の週末は二海乃姉さんに付き合ってあげます」
「やった、二海華。約束だからね、絶対忘れないでよ」
「はい、はい」
「二海乃さん、一つ聞いてもいいかな」
「零夜お兄様、そんなさん付けで呼ばずに呼び捨てにしてもらってもいいのですよ。それに私は零夜お兄様の妹なので敬語もなしで」
「それじゃ二海乃、一つ聞きたい事があるんだけど聞いてもいいかな……?」
「はい、なんですか零夜お兄様」
「俺があの日病室で初めて二海乃と出会った時に、二海華の名前を出したら癇癪を起こして二海華の事をとても恨んでいる様子だって。五叶から聞いたんだけど……」
「ああ、あれは芝居です」
「芝居?」
「はい二海華を恨んでいる芝居、そうした方がいいなと思ったので。それに私が恨んでいるのは二海華ではなく父親でした。あの人のせいで私は零夜お兄様の妹になる事ができなかった」
「二海乃姉さん」
「それに私は二海華の事が大好きですから」
二海乃は二海華の頬に顔を当てて頬をスリスリしている。
「二海乃姉さん、頬をスリスリするのは止めてください」
「はは……良かったよ。二海華の事を恨んでいるんじゃなくて」
二海乃は二海華との仲の良さをアピールする。けど二海華は嫌そうな顔をしていた。二海乃の二海華が顔をすり合わせていると俺の携帯にメッセージが届いた。
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