第拾伍幕 瑞光

 轟いた銃声が、京堂さんと螢さんを撥ね飛ばした――瞬間、私は満君に勢いよく床に倒された。それと同様に瑠偉は机の陰、西条さんは棺の陰に隠れた。

「満君……!」

「伏せていて!」

 満君は映画みたいに机の横を滑ると、倒れている螢さんの横へ屈み込んだ。つい声をかけそうになったけど、側に撃ち込まれた銃弾のおかげで口は閉じた。

「このっ……!!」

 満君は螢さんが落とした拳銃を拾い上げると引き金に指をかけ――。

 パン! パァン!!

 兵隊みたいな動きで引き金を引いた。発砲音が立て続けに轟いたけど、満君の銃弾はあっさりと躱された。だけど、奏が満君の反撃に気付いたのは発砲直前だ。それだのに奏は首を傾げるという最小限の動きで銃弾を躱してみせた。その光景に圧倒されたのか、満君は奏が銃口を向けたのに反応しないから――。

「満……!!」

 拳銃が轟いた瞬間、満君はその場から突き飛ばされた。「ぐっ……!!」と、呻いた満君の声で全てを察した私はその場から飛び出し、彼の側へ転がり込んだ。呼びかけてもすぐに返事はなく、生温い血と一緒に右肩には禍々しい花が咲いている。

 自分の手をべっとりと染める鮮血に身体は悲鳴をあげて竦み上がった。脳裏によぎるのは、高神家炎上の光景――。

「身の程知らずが邪魔したもんでね、大人しくしてもらったの」

 あの時、私を殺そうとしていた高神ありすのような壊れた目と心が吐き出したその言葉……今の私は戦慄なんてしなかった。悲鳴をあげて壊れかけた身体は自我を取り戻し、その壊れた声の持ち主へ視線を飛ばさせた。

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