第197話 誤解
翌日……俺は妻カティアを息子に取られた。
どういう意味かと言うと、カティアは夫の俺ではなく、息子のカーティスを選び、街へデートに行ってしまったのだ。
カティアよ……端から見れば、お前とカーティスは兄妹にしか見えない。
見る人が見れば恋人にも見えるかもしれない。
せいぜい気をつけたまえ。
これは俺が、カティアとカーティスに出掛ける間際に贈った言葉だ。
当のカティアは「問題ない。勘違いされても親子だと言えば良い」。
一方のカーティスは「勘違いされて困る相手はいませんので大丈夫です」。
とのこと。
カーティスは彼女いないのかぁ。
けっこうカッコいい顔してんだけどなぁ。俺に似て。
でもカーティスはなんか女性に興味なさそうだもんなぁ。
そこは俺とは大違いだ。
ある意味、昔のカティアに似てるな。
カティアも確か最初は結婚願望はなかったって言ってたし。
「んーっ!」
俺はグリータの豪邸から出て、朝日を浴びながら背伸びした。
全身の骨が気持ち良くしなる。
今日はグロリアとレミーベールと約束していたデートだ。
グリータいわく、トーナメントは明日らしいから、デートは今日やるべきだと判断したのだ。
なんでか知らんけどそのデートにローエとフランベールも付いてくることになった。
二人いわく、娘に手を出さないか心配だそうだ。
失敬な!
さすがの俺でも娘相手に手を出すわけないじゃないか。
……まぁきっと『娘に手を出さないか心配』は建前で、本当はローエとフランベールも、もっと娘と一緒に居たいだけなんだろう。
カティアだって息子と一緒に居たいからデートに行ったのだろうし、みんな可愛い親心だと思う。
それに今回のデートでローエとフランベールも加わってくれれば、美人を四人も連れたスーパーハーレムということになる。
素晴らしい。
美しい妻。可愛い娘。それを両手に。
これほどの至福があるだろうか?
「こんにちは!」
ニヤニヤ妄想してたら、いきなり見覚えのない女性に挨拶された。
淡い金の長髪で、目が糸のように細い。
【風属性】を表す緑の装備を身に纏い、背中には大きな鎌を携えている。
どうやら【攻撃魔法】が使える女騎士のようだ。
誰だろう?
見た感じ10代だが、グロリアかレミーベールの友達だろうか?
「ハイこんにちは」っと俺はとりあえず笑顔で応じた。
「カーティスさんは居ますか?」
お?
なんだカーティスの友達か。
いや、友達なのかな?
もしかしたら彼女とか?
「ああ、あいつなら街を回ってるよ。さっき行ったばかりだから追いかければ追い付けるんじゃないかな?」
「わかりました! ありがとうございます!」
カーティスの行方が分かった瞬間に一礼し、糸目の女騎士は満面の笑みで駆け出した。
なんだろ?
彼女というよりカーティスのファンなのかな?
「お父さんお待たせ」
ようやっと出てきたグロリアとレミーベール。
そしてローエとフランベール。
女子は準備が長い。
「おお、来たか」
「さっきのオフィーリアじゃん。なに話してたの?」
どうやらグロリアに見られていたようだ。
さっきの糸目の女騎士はオフィーリアって言うらしい。
やはり知り合いみたいだ。
「いや、カーティスさん居ますかって聞かれただけだよ」
「やっぱり。あいつほんっとカーティス好きよねぇ」
「ん? カーティスが好き?」っとローエが露骨に反応した。
「なにそれ詳しく!」っとフランベールもグロリアに詰め寄る。
ちゃっかり俺も詰め寄った。
めっちゃ気になるから。
しかし答えたのはレミーベールだった。
「あーいや、別に恋人ってわけじゃないのよ? オフィーリアは自称カーティスの彼女だから。自称ね。自称」
なにそれ面白そう。
「そうそう。オフィーリアは猛烈にアタックしてるけど、カーティスがあの通りムッツリだから成果なし」
グロリアが肩を竦めた。
やっぱりカーティス興味ないんだ女性に。
「そうなのか……けっこう可愛い娘だったけどなぁ。おっぱいも大きかったし」
すると妻と娘の四人に、真顔で指を捻られた。
「イダダダダダダダ! ごめんなさい! 冗談だって! 折れる! 折れる! 指があああああ!」
※
さて、カーティスさんはどこへ行ったのでしょうか?
【南の領地】にある商店街に来ましたが、それらしい人影は……あ!
居ました!
あの真紅の鎧は間違いありませんね!
さっそく近づいて、カーティスさんのために作ったお弁当を渡しましょう!
そして今日こそ彼女と認めてもらうのです!
何度も何度も助けて頂いた恩も返したいですし、今日こそ!
って!
誰ですかあの隣にいる女は!?
赤いポニーテールの女!?
あの格好……女騎士みたいですけど、あんな人、いましたっけ?
見たことありませんよ!?
っていうか、なんか、凄いカーティスさんと親しくしてませんか!?
馴れ馴れしくないですか!?
っていうか近くないですか!?
なんであんなベッタリと隣に並んで歩いてるんですか!?
カーティスさんもなんか、わたしにも見せたことないような笑顔してますよ!?
え、誰なんですかアレ!?
あんな綺麗な人……なんで今まで気付かなかったんでしょうか?
おかしい……ライバルになりそうな美人は、極力頭に入れてあるはずなのに。
カーティスさんと、あのポニーテールの人、凄く楽しそうに笑い合って歩いてる!
な、なんて幸せそうな……!
いや、ホントに、誰なんですかあの女は!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます