第115話 勝利は目前!?
ローエの一撃が見事に決まってディザスタードラゴンが花畑に吹き飛んだ。
豪快に花びらを乱れさせ、かの白竜は地に伏せる。
すると他のS級ドラゴンどもがそれに気づき、慌てたようにこちらへ引き返し始めた。
しかしそれはゼクードによって妨害され、それでも数匹の討ち漏らしがこちらに来る。
そいつらはブルードラゴンで、ディザスタードラゴンに張り付くローエに白銀のブレスを放つ。
ローエにとっては背後からのブレス攻撃だが、彼女の背はカティアがすでに守っていた。
白銀のブレスはカティアの援護防御によって防がれる。
あのゲートを破壊するほどの威力を秘めた白銀のブレスをガードするとは……カティアの防御能力は人間の限界を超えているように思う。
さすがだ。
カティアのおかげで背後の心配がいらなくなったローエは、そのままディザスタードラゴンへの攻撃を続行する。
ローエが【アタッカー】なら、カティアは彼女を護衛する【ディフェンダー】だ。
そしてわたし──フランベールは【アシスト】である。
ゼクードの討ち漏らしを徹底的に片付ける。
事前に打ち合わせしたわけじゃない。
みんなの得意分野を活かそうと思えば、自然とこのような役割分担となったのだ。
フランベールは仲間に接近する敵を狙撃して、ローエたちへの接近を許さないのが主な役割だ。
ブルードラゴンを野放しにしていてはカティアが防御で動けなくなる。
だからフランベールは得意の弓矢で敵を狙撃する。
愛弓【ブルーブランド】を引き絞り、一瞬で狙いをつけ召喚した【アイスアロー】を撃つ。
【気】を纏った氷の矢はS級ドラゴンの竜鱗を容易く貫通し、脳天をぶち抜く。
昔はあれだけ苦戦したブルードラゴンだが、今は複数を相手にしても簡単に全滅させてやれる。
しかもだいたい一撃でだ。
本当に強くなったなと、己が実力に感心する。
内心でそう思いながら、フランベールはローエとカティアに接近しようとしていたブルードラゴンを連続射撃で潰していく。
決してローエ達には近づけさせない。
本来ならわたしも、攻撃に参加してディザスタードラゴンに一矢報いたい。
二年前に担任をしていた『一年A組』の生徒たちの仇を討ちたい。
だが今は、その感情を抑える。
自分の激情に任せて戦えば、せっかくの流れを崩してカティアとローエの足を引っ張ってしまう。
ゼクードの誘導と、フランベールの狙撃のおかげで、ディザスタードラゴンを孤立させ、横槍の入らない状況を作り出せている。
だからここは二人に任せよう。
身内のローエとカティアがディザスタードラゴンを討ってくれるのならそれでいい。
青い光がフランベールの傍らをかすめ、花畑の地を抉って炎上させていく。
ディザスタードラゴンのブレス……だが、フランベールを狙ったものではない。
二発、三発、四発と飛来する青いブレスは前衛のローエとカティアを狙ったものだ。
彼女たちはディザスタードラゴンを中心に左右に別れて攻撃に移っている。
カティアがローエから離れ【アタッカー】に転じているのが見えた。
完璧に敵を孤立させた今、一気に仕掛けるつもりらしい。
ローエとカティアの挙動でそれを察したフランベールは、こちらに接近する敵がいないことを確認して【アイスジャベリン】を召喚する。
フランベールはいつでも援護できるよう態勢を整えた。
ローエとカティアが連携攻撃を開始する一方で、ディザスタードラゴンも大人しくはしていない。
直撃すれば間違いなく即死するであろう青いブレスを乱射し、ローエとカティアに弾幕を張っている。
しかしディザスタードラゴンは左眼の視力を失っている。
つまり死角だ。
左側の担当はカティア。
死角ゆえに精度のないブレスが乱射される。
しかしそれはカティアに対してはもはや弾幕にすらなっていなかった。
左足に滑り込まれたディザスタードラゴンは、カティアに銃槍を突き刺され、次いで爆破される。
赤い鮮血が舞い、左足を損傷したディザスタードラゴンは悲鳴を上げて膝をつく。
その一瞬の隙を逃さずローエが攻撃を繋げた。
狙った部位は腹。
奴の赤子が眠る腹部に対して、ローエは武器に【気】を纏わせる。
「【ドラゴンインパクト】!」
渾身の力を込めたローエの一撃は、ディザスタードラゴンの巨体を浮かせて吹き飛ばした。
凄まじい勢いに何度か花畑を転がり、ついには仰向けで倒れた。
背中の巨大な翼を広げ、人間のように大の字になっている。
腹部にくらった大打撃がよほど効いたらしく、ディザスタードラゴンはその大口から大量の血を吐き出した。
荒い呼吸を繰り返し、腹が上下している。
「【雷】と【嵐】が使えなければこんなものか」
カティアが言うと、ローエが武器を構える。
「カティア。トドメを刺しますわ!」
「ああ。終わりにしよう!」
そんな二人が前進する。
ディザスタードラゴンに向かって。
終わる。
ついに。
人類を絶滅の窮地に追いやったディザスタードラゴン。
そいつにトドメを刺そうと、カティアとローエが向かっていく。
凄い。
凄いよカティアさん。ローエさん。
援護なんて必要なかった。
フランベールはこの時、勝利を確信した。
刹那!
カティアとローエを、一つの影が追い抜いて行った。
「なんだっ!?」
「あれは!」
カティアとローエが驚いて足を止める。
彼女たちを追い抜いたのは、先ほどゼクードと共闘していたはずの【傷跡のドラゴン】だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます