第71話 魔法大砲について
俺はローエさんと見張りを交代してもらった。
ゆっくりとした足取りで焚き火の方へ向かう。
歩きながら、考えた。
あの超大型ドラゴンの討伐方法を。
1つだけ希望はあるが、
その希望とは【アークルム王国】が開発した【魔法大砲】のこと。
あれは黒いS級ドラゴンを撃退してみせた実績がある。
今のままでは使い物にならないが、なんとかして強化できないだろうか?
【魔法大砲】の強化こそ、あの超大型ドラゴン討伐への近道だと思うのだ。
だが問題は、
【魔法大砲】をそもそも【エルガンディ】で作れるのか?
というところだ。
【アークルム王国】は滅んだ。
今さら戻って【魔法大砲】を探すわけにもいかない。
そもそもあんな超大型ドラゴンに侵略されては無事では済まないだろう。
元になるサンプルがあった方が、開発に掛かる時間も短くできるのに。
そもそもドラゴンがチンタラと待ってはくれない。
だから開発に掛かる時間はできるだけ短くしたいのだ。
まったく新しいのを開発するには、時間があまりにも足りなすぎる。
だから、やっぱり、俺だけでも【アークルム王国】に戻って設計図を探すべきか。
いやでも、運よく【魔法大砲】が残っていて発見できても、俺だけでは運べないかもしれない。
そうなると結局は時間が掛かる。
うーん……どうするか。
ローエさんたちを連れて【アークルム王国】の探索を行うべきかもしれない。
あれこれ考えながら俺は、気がつけば焚き火の前まで戻ってきていた。
そこにはガイス隊長が起きていて、地面に座りながら焚き火に薪を足している。
「眠れませんか?」
俺が聞くと、ガイス隊長はこちらを一瞥してから薪を追加し、答える。
「いや……少し寝た。だいぶ楽にはなったよ」
「それは良かった」と俺は焚き火の前で暖を取ろうと腰を降ろした。
そのまま両手を火に近づける。
「はぁ~あったかい……」
火の熱を感じながらそう呟く。
俺はガイス隊長に【魔法大砲】の事を聞こうかとタイミングを見計らうが。
「──……なぁ」
あっちから話し掛けてきた。
「はい?」
「あの最後に出てきたドラゴン……勝てると思うか?」
ローエさんと同じ質問だ。
抱える不安はみんな同じ、か。
「まともに行ったら勝てませんね」
俺は首を振り、正直に答えた。
焚き火がパチンと大きく弾けた。
俺の答えに押し黙ったガイス隊長に、俺は一息ついてから口を開く。
「まず人間サイズの攻撃を受け付けないでしょう。俺の【竜斬り】も今回ばかりは役立たずです」
「【竜斬り】?」
「ん……まぁそれは置いといて。ガイス隊長。【魔法大砲】について聞きたいのですが」
「なんだ?」
「あれの作り方って、ガイス隊長わかります?」
「いや……俺は騎士専門だ。開発のことは分からん」
「ですよねぇ……」
ダメ元で聞いてみたがやはりダメだった。
やはり【アークルム王国】に戻って設計図なり何なり探した方がいいのかも。
「なぜそんなことを聞く?」
「【魔法大砲】を【エルガンディ王国】で作れないかなって思ったんです」
「あんなもの……あの大型ドラゴンには通用しないぞ?」
「でも今ある兵器の中では最高の威力を持ってますよね?」
「それはそうだが……」
「バリスタや大砲じゃS級ドラゴンの竜鱗は貫通できません。【魔法大砲】にはそれが出来た。なら【魔法大砲】の強化こそ、あの大型ドラゴン討伐の近道だと思うんですよ」
「……強化?」
ガイス隊長が俺を見てきた。
俺は頷く。
「はい。今のままじゃ威力不足なのはわかってますよ。だから強化するしかないんじゃないかなって」
「……」
「それに確か、あの超大型ドラゴンは自己再生するって聞いてます。だからなおさら【魔法大砲】の強化しか道はないと思うんですよ。時間的にも」
「……そうだな」
納得してくれたようで、ガイス隊長はまた薪を焚き火に追加した。
そして言う。
「俺には【魔法大砲】の知識はない。だがその辺の心配はしなくていいだろう」
「え?」
「【魔法大砲】の設計図ならとうに【エルガンディ王国】に提供されているはずだ」
「え、そうなんですか!?」
初耳だった。
いつの間にそんな技術の提供を。
「【リングレイス】【オルブレイブ】が壊滅したと報告が入ったとき、我が国王さまは即決なされたんだ。【魔法大砲】の【設計図】を【エルガンディ】へ提供されることを。【アークルム王国】だけが生き残っても人類に未来はない。そう判断してのことだったんだろう」
「なら【魔法大砲】は【エルガンディ王国】でも開発できるってことですね!」
「そうなるな」
「よし!」
俺は両手をパシンと合わせた。
希望が見えてきた。
あとはその【魔法大砲】が、どこまで強化できるかだ。
あのドラゴンの竜鱗を貫通でき、なおかつ再生能力を上回るほどの威力を出さねばならない。
そう簡単な強化ではできないだろう。
強化に時間が掛かるようなら、最悪……あの超大型ドラゴンの足留め策も練らねばならない。
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