第32話 主役登場!
「おお! 彼は!」
【第一城壁】にてS級ドラゴンの戦いを見守っていた総司令が声を上げた。
【ドラゴンキラー隊】の隊長がついにS級ドラゴンと対峙する。
その光景は総司令だけでなく、周りの騎士たちにも生唾を飲ませた。
「総司令。戦況はどうか?」
突如聴こえた国王さまの声に、この場にいるみなが驚く。
「国王さま!? ここは危険です!」
総司令が慌てて言うと、国王は肩を竦めた。
「S級ドラゴンの攻撃は城にまで届いている。どこにいても危険に変わりはない。それよりどうだ?」
「は! フランベール・フラムが危ないところでしたが、もう大丈夫でしょう」
「ん?」
「ご覧ください」
総司令は望遠鏡を国王さまに手渡した。
それを国王さまは覗き込む。
そこには200匹にも及ぶA級ドラゴンの亡骸が地に伏せていた。
どうやらA級ドラゴンは全滅させたようだ。
そして生き残った王国騎士たちが前を見つめている。
国王もその先を見た。
最前線でS級ドラゴンと向き合う黒き鎧の少年。
「ゼクード・フォルスか」
「はい。たったいま彼はS級ドラゴンの腕を切り落としました。やはり彼は大したものです」
総司令が感服したように言う。
そして国王もまたそれには同意だった。
あの若さで本当に大したものだ。
頼むぞ。
ゼクード。
国王・総司令・王国騎士たち。
その大勢に見守られる中、黒騎士ゼクードとS級ドラゴンの戦いがいま始まろうとしていた。
※
S級ドラゴンと対面するその背中は、間違いなくゼクードのものだった。
何度も見てきた彼の頼もしい背中。
それをフランベールが見間違えるはずもなく。
──あぁ、もう大丈夫だ。
ゼクードの背中を見つめながら、フランベールはふとそんな希望のような暖かい安心感を感じた。
ちょっと前までは絶望しかなかったのに。
ゼクードが来てくれたことで一気に逆転した。
ゼクードはロングブレードを煌めかせ、いつでも攻撃・回避をおこなえる構えをとっている。
視線はS級ドラゴンから外さない。
「隊長!」と歓喜するローエとカティアの声が響き、フランベールも思わず「ゼクードくん!」と叫んでいた。
「先生は下がって! あとは俺がやります!」
「うん! ありがとう!」
彼の邪魔にはなりたくない。
急いで立ち上がり、フランベールは後方へ下がった。
その途中見つけた。
フランベールを貫くはずだったS級ドラゴンの爪が、近くの地面に突き刺さっていたのだ。
氷・竜鱗・竜骨という三段層の肉質を見事に叩き斬っている。
自分やカティア・ローエたちではダメージを与えることすら困難だったのに。
やはり彼は凄い。
ある程度まで下がるとフランベールは振り返った。
片手を失ったS級ドラゴンは、それでもそのままゼクードと対決しようとしている。
一番危険だと判断したゼクードを、片手を無くしたまま戦うつもりらしい。
互いに睨み合うこと数秒。
S級ドラゴンがついに動いた!
それは残った片腕による爪の振り抜き。
あまりにも速く、反応するのも大変だったそれをゼクードは容易く回避した。
そのとき思い出した。
ローエとカティアがくらった爪からの尻尾攻撃という二段構えの攻撃を。
「ゼクードくん! それは二段構え──」
告げるのがあまりにも遅かった。
そして声を届けるにはあまりにも距離があった。
S級ドラゴンは回避された爪を地面に突き刺し、そのまま勢いをつけて巨体をスピンさせ尻尾の薙ぎ払いをゼクードに放つ。
その尻尾の薙ぎ払いはローエとカティアがくらったそれよりも遥かに速く、正直フランベールにはとても目で追えないほどだった。
二段構えの攻撃を知らないゼクードがこれに対処するのは不可能。
ゼクードくんがやられてしまう!
そう思ったのも束の間。
薙ぎ払われた尻尾は、二段構えを見切っていたらしいゼクードが一刀両断した!
回避するのではなくぶった斬る!
切断された尻尾は天を舞い、S級ドラゴンは痛みに吼えて転倒した。
「おおおお!」と周りの仲間たちからの歓声が上がった。
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