第11話 ドラゴンキラー隊、初陣!

 俺は武器と防具を装備して城壁のゲートへ向かった。

 受付嬢さんに話を済ませ、ゲートを潜(くぐ)り城壁の外へ出た。

 いよいよ【ドラゴンキラー隊】の初陣である。

 

「目的の狩猟区まで走ります!」


「了解ですわ」

「了解だ」

「了解よ」


 ローエ・カティア・フランベールが俺の号令に揃って応えた。

 美しい三人の声は王国の歌姫にも勝る美声に思う。

 そして年上の女性三人を従えているという妙な男の全能感がやばい。


 気合いが上がり続ける俺は、味方の王国騎士たちが戦っている草原まで一気に駆けていく。


 そこで俺はさらに驚いた。

 後ろのローエ達が俺の速度にちゃんとついてくるのだ。

 バカにしていたわけじゃないが、これはいい。

 部隊の移動速度が快適なまでにスムーズだ。


 これがいつものグリータやクラスメイト達だったならば、かなり俺も速度を落としていただろう。

 あいつらはそこまで足が速くないからだ。


 ぶっちゃけ彼らの凄いところは逃げ足である。

 C級騎士なのにA級ドラゴンを相手に俺が来るまで平気で逃げ回るんだもん。

 生存率だけなら俺たちS級騎士に匹敵するだろう。



 広大な草原では【エルガンディ王国】の騎士たちがドラゴンの群れと戦っていた。


 普通に優勢で、ドラゴンマンやドラゴンベビーなどの雑魚はあらかた一掃されている。

 残りのA級ドラゴンも10匹を切ろうとしていた。


 味方に倒れている者は見当たらないし、重傷者はいないようだ。

 さすがはA級騎士揃いの王国騎士たち。

 みんな優秀である。


 しかし妙だな。

 ドラゴンマンやドラゴンベビーを従えてるのは分かる。

 でもA級ドラゴン同士がこうも頭数を揃えてくるのは珍しい。


 ドラゴンは基本的に同レベルの相手と群れなんて成さない習性がある。

 番なら分かるのだが、それにしては数が多すぎる。


 まさかどれかの♂ドラゴンがハーレム形成してやがるのだろうか?

 もしそうならドラゴンのくせに生意気だな。


 ドラゴンは昔から一人の相手と添い遂げるって聞いてたけど違うのかな?

 変わってきたとか?

 いやでも人間なんて昔から一夫多妻のとことかあるし、ドラゴンにもそんな面があってもおかしくはないか。


「凄い数ね。でも劣勢というわけでもないみたい」


 フランベール先生が安堵した声で言った。

 

「どうしますの隊長?」


 ハンマーを肩に乗せたローエが俺に聞く。


「下手に横から加勢して味方の騎士たちの流れを崩したくないね。ここはフランベール先生」


「うん?」


「左端のドラゴン二匹をこちらに誘い出してください」


「了解」


 フランベール先生は背中の大弓を展開した。

 次いで【蒼騎士】たる氷魔法にて『氷の矢』を形成し、それを大弓につがえた。


 先生お得意の『アイスアロー』である。

 この魔法を覚醒させられたのがきっかけでフランベール先生は『弓使い』になったのだとか。

 昔は剣を使っていたらしいが、それもかなりの腕前らしい。


 魔法で形成された氷柱のような大矢には弾切れという概念がない。

 魔法で飛ばすより弓で射った方が狙いが正確で使いやすいとのこと。


 現にそれは正しく、フランベール先生が大弓で放った『アイスアロー』は曲線を画いて100メートルほど先にいるドラゴン二匹に命中した。


 それも立て続けに何発も。

 まるで外す気配がない。

 この距離でこの精度はさすがとしか言い様がなかった。


 しかし距離と竜鱗のせいであまり効果的なダメージは与えられていなかった。

 A級ドラゴンはやはり頭部と腹部しか肉質の柔らかい部分がないため、鱗の濃い背中に当てても大したものにはならない。


 でもこれはあくまで誘い出しのための射撃だ。

 ドラゴンもさすがに何発も氷柱を射たれて鬱陶しくなったらしく、こちらに顔を向けて怒りの咆哮を放ってきた。


 二匹のドラゴンは群れから外れてこちらに猛進してくる。

 取り巻きのドラゴンマンやドラゴンベビーもいたが、それらの雑魚はあっという間に全滅した。


 フランベール先生は誘い出しに成功したと見るや瞬時に狙いをドラゴンマンやドラゴンベビーに変えていたのだ。

 A級ドラゴンより的が小さいのに一発も外さず頭をぶち抜いていた。


 凄い。


「よし。A級が二匹来るぞ!」


 カティアがバスターランサーを構える。

 ローエもマグナムハンマーを肩から下ろして構えた。

 倣って俺もロングブレードを抜刀して走り出す。


「一匹は俺が仕留めます。みんなはあの一匹を頼みます」 


 その指示に一瞬だけ驚いていたローエ達だったが、向かってくるドラゴンを見てすぐさま「了解!」と応えた。


 彼女らを確認してから俺は狙いを左のドラゴンへと定めた。

 加速に加速を重ねてドラゴンへ肉薄する。

 刹那、ドラゴンが火球を発射。

 

「おっと!」


 仕草でとうに見切っていた俺は火球を一刀両断し、ローエ達のいない上下に飛ばした。

 さらに俺は加速し、剣の届く距離へ。


 目前のドラゴンに親父直伝の『竜斬り』を放った。

 竜鱗と竜骨を容易く両断する銀色の斬光がドラゴンの胴体を真っ二つにした。

 

 親父が対ドラゴン戦用に発明した剣技。

 これを会得した俺に断てぬドラゴン無し!


 カチンとロングブレードを鞘に納めた。


 そしてローエ達の戦いを見ると、案外と連携が取れていた。

 ローエが突っ込み、彼女に向かってドラゴンが火球を放つがそれをカティアが大盾で見事に防ぐ。


 果たしてカティアは屈んで、ローエがそのままカティアの肩を蹴って跳躍する。

 落下の威力を上乗せし、ハンマーによる大打撃をドラゴンの頭部にお見舞いした。

 

 バコォンと轟音を立ててドラゴンの顔が地面にめり込んだ。

 そのめり込んだ頭部にカティアがトドメの突き刺し。

 地面に着地したローエがステップで後退するのを見、トリガーを引いて起爆した。


 見事な連携攻撃だ。

 ローエとカティアはどうやら過去に何度か共闘した経験が有るみたいだ。 

 でなければ一回や二回の共闘であそこまで洗練された連携攻撃などできるはずもない。


 よほど相手の事を知り、信頼してなければ成せないものだ。

 プライベートでは仲こそ悪いが、狩りでの相性は良いらしい。

 

 見事な連携過ぎてフランベール先生が暇になっているほど。

 

 ふーむ、個々の能力は高いのだが部隊としてはやはりまだまだなのだろう。

 そもそも俺も一人で討伐してたら部隊の意味がないな。


 みんなの能力を活かした効率的な戦い方はきっとあるはずだ。

 今後の俺の課題だな。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る