第6話 カティア VS A級ドラゴン

 森の東側にある広場は見晴らしの良い木の少ない場所となっている。

 暗さを嫌うドラゴンも中にはいるようで、よくこの付近で見かけることが多い。


 案の定、ドラゴンはいた。

 カティアは炎魔法である【フレイム】を空へ向けて発射し、発見のサインを送る。


 ここは木々に覆われていないから空を見易い。


 先ほど西側から闇魔法の【ダークマター】が飛んだのを見た。

 あれは一年のゼクードだろう。

 そして自分と同じタイミングで飛んだ【ウィンド】はあのうるさい女。


 全員の合図は来た。

 狩りの時間だ。


 目標のドラゴンは【フレイム】の音ですでにこちらに気づいており、まっすぐ突進してくる。

 

 カティアはバスターランサーを取り出し構えた。

 ドラゴンをギリギリまで引き付ける。

 敵は腹が空いてるのか、大口開けてカティアに噛みつこうとした。


 見飽きた攻撃だ。

 カティアはドラゴンの牙をバックステップで容易く避け、竜鱗の少ない首筋をバスターランサーで突き刺す。


 カチン、と突き刺した刹那にトリガーを引き、機械槍が火薬を吹いて起爆した。


 肉質の柔い首筋の肉が弾け飛び、鮮血が舞う。

 悲鳴のような吼えを見せるドラゴンだがカティアにはただの隙でしかなく、情け容赦ない追撃をおこなう。


 肉が弾けた部位をさらに突き刺し、喉を貫通させる。

 わざわざ堅い他の部位を狙う必要はない。

 短期決戦だ。


 突き刺した機械槍をまた起爆させ、喉の内部を爆破の熱で焼いた。

 しかし、喉に風穴を開けられたドラゴンはそれでもまだカティアに向かってくる。


 さすがの生命力だ。


 ドラゴンは首から血を吹き出しながら、さらに火を吹き出した。

 それは火球を発射するために喉から漏らした炎だろう。


 目前のカティア目掛けて最後の悪あがきをするドラゴンだったが、苦しい思いをして発射したであろう火球はカティアの大盾によってあっけなく防御された。


 カティアはその火球を大盾で受けながらも前進し、開き切ったドラゴンの大口にバスターランサーを突き刺す。

 ブシュッと血が舞い、カチンとトリガーを引いてトドメの爆発を口内に食らわせた。


 口から黒煙が上げ、ドラゴンは目を真っ白にひん剥かせて倒れた。

 討伐完了と同時にカティアは手を空へ掲げ【フレイム】を発射。


 かなり早いペースで狩れた。

 これなら一位は私だ。


 そう思って【フレイム】を発射したのだが、西から【ウィンド】が飛んでいた。


「!」


 同着だ。

 しかもあのローエか。

 またあいつと同着か。


 騎士学校三年生の間ではライバル同士とまで言われてしまっている不本意な関係。

 これで白黒つけてやりたかったのに。


 カティアは舌打ちして広場を後にした。

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