第21話 *

太陽が実家に戻ると、ジェシーは横になったままだったけれど、大きく尻尾を振って喜んだ。

ほんの少し会わなかっただけなのに、ジェシーは随分痩せてしまったように感じる。

以前は太陽の食べている物を何でも欲しがったのに、今は見ているだけで、興味も示さない。好きだったはずのスイカをあげた時も、一欠片を長い時間かけて食べていた。


その日の夜、実家ではいつもそうだったように太陽はジェシーと一緒に寝た。

大きくて、重かったジェシーは、触ると骨にふれて、抱きしめると一回り小さくなったような気がした。




次の日の朝、ジェシーは太陽の手から少しだけ、湯がいたササミを食べたものの、そのまま深い眠りについた。


「まるで兄貴が帰るの待ってたみたいだ」


太陽と同様、弟も目を赤くしてそう言った。



長く一緒に過ごしていたのに、あまりにも最後があっけなくて、火葬した後の骨を前に、家族で泣いた。太陽が一番泣いた。


その日の夜、家族でジェシーの思い出話をした。


家族で出かけて帰って来た時、留守番が不服だったのか、キッチンに置かれていた小麦粉の袋を破って振ったらしく、床が真っ白になっていた話。

お腹を壊した時、薬を飲ませたつもりが、後でこっそりと吐き出していたこと。

理由は覚えていなかったけれど、ジェシーが弟の機種変したばかりのiPhoneをひと噛みで破壊した話。

全てが楽しい思い出に変わっていて、笑ってしまうことばかりだった。

笑った後、少し寂しくなる。

ジェシーとはもう会えない。


(近くに住んでるのに、もっと頻繁に帰ればよかった……)



夜、ひとりになって、太陽は瑠奈と一緒にいて楽しかったことばかりを思い出した。


(やっぱり絶対に話さないとだめだ。今話しておかないと、きっと後悔する)


太陽は瑠奈に電話をした。


いつもと違って、流れてきたのは電源が入っていないアナウンスではなく、電話が解約されたことを知らせるアナウンスだった。

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