第7話 *

授業が終わり、帰ろうとしたところで、太陽はまた奈帆につかまった。


「吉高さん、今日学校休んだのは、デートしてるからだと思うよ」

「またその話?」

「聞いたから。社会人のいい人がいるって話してるのを」

「いつ誰と話してた?」

「それは……」

「井坂、一体何がしたいの?」

「今日だってその人と会ってるはず」

「そいつ仕事何やってんの?」

「証券会社に勤めてるって聞いた」

「今日、平日だけど会社は?」

「ゆ、有給休暇」


太陽が無視して行こうとした時、奈帆が言った。


「スマホの電源、切ってるはず。いつもその人と会う時は日下部くんから電話あったら困るから、電源切ってるって聞いた」


スマホのことを言われて、太陽は立ち止まった。


「誰からそういう話聞いてるのか教えてくれたら、少しは信じてもいいけど?」

「あ……えっと……あの……お、お姉ちゃん」

「瑠奈の相手は、井坂の姉さんと同じ会社のやつってこと?」

「……そう」

「わかった」

「ほ、本当にわかってくれた?」


太陽は最後の言葉を無視して、少し歩いたものの、振り返って言った。


「それで、オレが瑠奈と別れたら、井坂が彼女になってくれる?」

「えっ!」

「どうなの?」

「ありえない!」


奈帆は太陽を残して走っていってしまった。


「やっぱり、わけわかんないんだけど? 井坂の目的って何?」


太陽は奈帆の後姿が見えなくなるまで、その場に立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る