自分にそっくりな子

天川裕司

自分にそっくりな子

タイトル:自分にそっくりな子


「あいつ、俺の子供の時にそっくりじゃないか…」

ある日、街中で、

自分の子供時分にそっくりな男の子を見つけた。

自分のことながらそれがわかる。


俺は思わずその子のあとをついて行った。

その子は小学校低学年ながら、電車を2本乗り継ぎ、

けっこう遠い地まで帰ってゆく。


「親御さんとかおらずに、あの子1人で来てるのか…」

他人の子ながらちょっと不思議な気もしたが、

とにかくその子のあとをついて行った。

まぁ今日は暇ながら、こんな事もできたんだ。


でもだんだん親しみと言うか、不思議と言うか、

懐かしい望郷の心に囲まれて行く。


その子が帰って行くのは、

なんと、昔俺が住んでいた土地だった。

大阪の某市内にある社宅からの最寄り駅で

その子は降りた。


そして「もしかして…」と思っていたら

そのとおりにその子は、

その社宅がある方向へずんずん進んで行く。


そして社宅に着き、

その子は203号の部屋へ帰って行ったのだ。

「ウ、嘘だろ…」

その子がドアを開けた瞬間見えたのは、

今度は俺の母親そっくりな女の人。


若い頃の母親にそっくりなその女性で、

その子がドアを開けて帰ってきたのを笑顔で迎え、

温かい家庭のぬくもりのようなものが

その部屋の中から漂ってくるようだった。

そしてドアがバタンと閉まる。


「………」

しばらくそれに見とれていた俺は

少しまた現実に返り、姿勢を正して帰路につく。


「何か良いモン見た気がするなぁ…」

なんて思いながら自宅に戻り、

俺は早速パソコンに向かった。


Googleマップでその界隈を検索し、

もう1度、あの社宅を見てみようと思ったんだ。

懐かしさとあの時のぬくもり、

その思い出に浸りたいとする俺の正直…

何かに慰めて貰いたい気持ちが勝っていたんだろう。


「えーと、大阪…某市内にあるこの社宅…と」

検索してみると、

ちょっと信じられない光景を目の当たりに。


「…え?無いじゃん。え?取り壊されてたのこれ…?」

ずっと元住んでいたあの場所から

遠ざかって生活していた俺は、

その界隈事情に全く疎かった。

あの社宅は、もう数ヶ月前に取り壊されていた。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=30_az7gZVGw

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自分にそっくりな子 天川裕司 @tenkawayuji

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