第6話 情緒安定思考
休暇二日目っ!
いや~天才たるこのボクが昨日はハメを外して楽しんじゃったな。
宿の窓から差し込む朝日を浴びて大きく背伸び。う~んいい朝だ。
「サーライル、ちょっとコーヒーでも入れて……。あっ居ないんだった」
いけないいけない。もう何ヶ月も経つのに、気が緩むとこれだもの。
丁稚として便利だったあの男は、ボク達が殺しちゃったから居ないんだ。
ちょっと惜しかったかなぁ?
でも、じゃあレアアイテムと引き換えに出来るかって言えばそんな事ないんだけどね。
仕方ない。居なくなっちゃった人間の事でアレコレ考えるなんてボクって優しいんだ。
「ふんふふ~ん。しっかし前にリゾート地に来たのってどのくらいぶりだっけ? ……ま、いっかそんなの。けど、こういうところでナンパをするってのも才能だよね。あは♪」
皆んなが休暇を楽しむ間、その間に男の一人や二人堕とすくらいは出来て当然。
身支度をして、鏡の前で着飾る。
代わりに髪を結んでくれる人間は居なくなったけど、自分でもすっかり様になったみたい。
さぁて、今日はどんな男の子と出会えるかな~? 少しは”持つ”と嬉しいんだけど。
仕方なく自分で入れた朝一杯のコーヒーを飲みながらそんな事を思うのだった。
宿から飛び出して街を歩けば、浮かれた人たちの群れ、群れ、群れ!
そういう街なんだから当たり前といえばそうなんだけど。
国内有数のリゾートの街は伊達じゃない。
街全体がアトラクションで出来てる此処ほど、人の出入りが激しい街ってのも少ないもんだね。
思えばボク達が出会った村は此処とは正反対だったかな? 静かさが売りとでも言いたげな、退屈な場所。
あそこで二人と出会って、その内アモネとラキナが加わって……。
そして今は一人死んじゃった。
サーライルもアホだなぁ。ラキナなんかにデレデレしてなきゃ、まだパーティに居れたかもしれないのにね。
知らぬは本人だけか。雑用しか出来ない男だったけど、好きにコキ使えるって点じゃまだまだ利用価値があったのにね~。
計算高いのばっかり残っちゃって、今日みたいな息抜きがないと詰まっちゃうよ。
それはさておき。
こういう街は輝かしい反面、影も濃いってね。
だって、今もほら……。
「はぁ……。これ片づけないと、また怒鳴られる」
格好だけまともなのは不審に思われない為かな?
疲れ切った顔の少年が、ゴミを持って路地裏に消える。
どこかの店で奴隷同然にコキ使われているってところだろうね。
こういう街だもの、浮かれた人間にみすぼらしい人間。メリハリが効いてるもんだよね。
「じゃあ、ナンパ! しちゃおっかなぁ~?」
ボクはその男の子が消えた路地裏へと入っていった。
……どうせ生きる喜びも無いんだもの、花を咲かせてやるのも人情ってやつ?
ボクって優しいんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます