ある日彼女が死んだ

ルイ

彼女が死んだ

ある日一人の女性が死んだ

その人の名は尾木萌音おきもね

幼馴染で....俺の彼女だ


彼女が死んだ日は唐突に来た

俺と萌音が二人で出かけていた時いきなり近くの男が刃物を取り出して周りにいた全員を切りつけた。

その時に俺は真っ先にナイフで刺され、出血の量が多く気絶してしまい後のことはわからない。

ただわかっているのは萌音がそいつに殺されたということだ


そして俺が目を覚ました時にはすでに萌音の葬儀は終わっており彼女の最後にすら立ち会えなかった俺に残ったのは彼女の骨と後悔だけだった


もしもその日、別の場所に言っていたら

もしもあの時気絶せずに萌音を守れていれば

そんな後悔が押し寄せる

食欲がわかない。眠れない。

ただ俺は彼女のことを思い続けるだけの存在になりかけていた


しかしそれでもまだ正気を保てていたのは彼女の妹のおかげだろう

妹の名は尾木奈久佐おきなぐさ

彼女が病室に来ることはほとんどないのだが彼女が来るときには色々な話をしてくれていた。

その時だけは萌音の死を考えずに済んだ。


そして今日が退院の日だ

数週間お世話になった病室に別れを告げ、俺は病院の一階へ行く

エントランスに着くとすでに母がいた

母は俺に気づくと何も言わずに目だけで「帰るわよ」と伝えて病院を出る

俺も母に続いて病院を出る


駐車場に止めてある母の車の助手席に乗る

母は何も言わずに車を出す

曲名はわからないが夏を思いださせるような歌が流れ始める

「~~~~~♪」

母との間に会話はなくただ歌だけが流れる

少し決まづいような感じになり俺は窓からの景色を眺める


都会よりの田舎ということもありかなりの数の家などが立ち並んでいる

そしてその数、日常があるのだろう

そう考えると「妬ましい」と思ってしまう

俺の日常は壊れたのに笑顔に日常を謳歌している人たちに対して言いようのない怒りもわいてくる。

俺は景色を見ることを辞めて俯く


そうしていると車が止まった

家に着いたのだろうかそう思い顔を上げるとそこは萌音の家だった

俺は母の顔を見る

母はまるで俺に「行ってこい」と言いたげな目線を送ってくる

俺はその視線に耐えることができずに車を降りてインターホンを押す

「ピーンポーン」

足音がドアに近づいてきてガチャ。と言う音がした後、ゆっくりとドアが開く

「はっ...はい!どうかされましたかっ...て、瑠衣さんですか....」

出てきたのは黒髪を腰あたりにまで伸ばして前髪を鼻にかかるまで伸ばしてる幽霊...ではなく萌音の妹である奈久佐だ

「どうかされましたか?」と俺の母の方をちらりと見た後聞いてくる

俺は「いやぁ、母さんに行って来いって見られてな」と言うと

「あはは...相変わらず目で話し掛けてくるんですね....」とツッコみを入れた後

「折角ですしお茶でも入れますよ」と言われ俺は彼女についていくように家の中へと入るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ある日彼女が死んだ ルイ @ruisyousetu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ