Old Wise Men

愚禿

第1話  逆像

 まちなかで座禅を組んでる達磨がいたらそりゃ誰だって目を向けるけれど、バス停のベンチで世界平和とか存在論とかを考えている高校生がいたって、バスが止まるだけだし、そりゃ終点にもつく。

 一人で考えることにも限界が来て、本とかネットを調べるのに費やした中学生活は、たいして理解もできない哲学者の名前をかきむしって終わったことだろう。そのうちさして進展もない自由研究にもあきがきて頭を回すこともなくなる。この輪廻に終止符を打つべく現れた将来の大思想家もまちゆくJKに脳みそを持っていかれたのでなないだろうか。

 そして今この俺が!!とおもっているそこの君、未来を背負え、そう言いたい。いつか窓際に現れる老僧、道の酒だるにうずくまる賢老との出会いが、俺を真理に連れ出してくれる運命が約束されていたはずだった。あるいは、思い返せば、あのときは哲学に夢中になって世界自体は見ていなかったのかもしれない。ほんとうは世界には真理の入る隙間がなかったのかもしれない。いまでは道具的な存在はシャーペンに固定され、ザインは単語帳に収まったのだ。いいじゃないか普通バンザイ。高校生活はレールの上を走っていた、眼鏡が曇って前が見えない雪の日を超えても、結局春だけは道具的には現れなかった。

 逆立ちして俺は考えた。天から降ってこないなら地面にあるんじゃないかって。信じられないことに効果はばつぐんだった。 



新聞を取りに降りると、黒桐マリがうちの郵便受けを覗いていた。もっともその時にはダルジュロスには見えなかったけれども。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Old Wise Men 愚禿 @toko-cocteau

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る