第11話

驚きのテレポート


ある日の日曜日、ゆみこは晴れた空の下、道路の歩道を歩いていた。子供たちが楽しそうに遊ぶ声が響く中、ゆみこの目に飛び込んできたのは、赤信号の前で立ち止まっている小さな女の子だった。彼女は不安そうに周りを見回し、動けずにいる。


その瞬間、ゆみこの視界に車が近づいてくるのが見えた。「危ない!」と心の中で叫び、ゆみこは迷わず自分の能力を使うことを決意した。すぐに「自分の家」と思い描くと、女の子は一瞬で彼女の自宅の自分の部屋にテレポートされてしまった。


車が通り過ぎるのを見てほっと胸を撫で下ろし、ゆみこは急いで自宅へ戻った。部屋に入ると、目の前には驚いた表情の女の子が立っていた。しかし、女の子は服がないことに気づくと、すぐに困惑の表情に変わった。


「どうして服がないの?何が起こったの?」女の子は涙を浮かべながら尋ねる。ゆみこは申し訳なさそうに、「ごめんね、急いで助けようとしたんだけど…」と答えた。自分の能力の影響で混乱した状況を説明しようとするが、どう説明すればいいのかわからず、戸惑うばかりだった。


「ここには私の服があるから、着替えていいよ」とゆみこはタンスから自分の服を取り出し、女の子に渡す。女の子は一瞬驚いた表情を浮かべた後、ほっと安心したように微笑む。


その後、女の子はゆみこの服を着て、少しずつ心を落ち着けていった。ゆみこはこの出来事を通じて、自分の能力が持つ意味や、責任の大きさを再認識した。力があればあるほど、他者を助けるための思慮が必要であることを感じたのだ。


やがて、女の子は「ありがとう、助けてくれて」と感謝の言葉を口にした。ゆみこは微笑んで、「いつでも助けるよ。だけど、信号はちゃんと守ろうね」と返した。女の子は頷き、二人は笑顔で心の距離を縮めていった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る