雨と夜空に花は咲く

@r1s

第1話 僕は僕のまま君は咲く 

「私とバンドを組みなさい」

昼休み。たった今、教室の真ん中で、無理難題を押し付けられている。

僕は斉藤晴。あまり目立たないタイプの高校2年生。

それに対し、話しかけてきたのはいかにも陽のものと言った3年生の女子。

ショートの黒髪を揺らす姿は綺麗で、黙っていればアイドルに見えるかもしれない。

え?なんかしたっけ?僕。

「え、えっと、まずどちら様?」

「私を知らないの?」

「はい」

彼女は少し驚いたような表情になった。が、すぐに表情をドヤ顔に変えた。

「私こそ、この学校のマドンナ!白羽由紀よ!!斉藤晴、私とバンドを組みなさい!!!」

イタい!

幸い、今周りに人はいなかった。呆れて言葉が出ない。せっかくの美人が台無しだ。

「賑やかな人ですね」

「皮肉かな?」

「そうですね。貴方とバンドを組む気はないのでお帰りください。」

しかしまぁ、この人がここで引き下がるわけがない。

「いや、まぁそう言わずに。ね?」

「やらないって言ってるでしょう?」

「まぁ、こっちにも色々事情があるんだよ。とりあえず後で話をしよう。放課後、音楽室に来てくれ!!」

それだけ言うと彼女はこっちの予定も聞かず走り去ってしまった。

僕に予定があったらどうするつもりだったのだろうか。

「ほんと、賑やかな人だったなぁ」

呆然とした脳みそでそう考えながら、僕は天井を見つめる。

「もう、やらないんだって」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雨と夜空に花は咲く @r1s

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ