憧れの転生はギャルゲーのクズモブ貴族でした!?〜攻略知識もないので好き勝手してたらいつの間にか主人公の座を奪ってた件〜

冬ノよろしく(先代は冬ノゆきね)

1章 これぞ貴族だ(モブだけど)

第1節 ギャルゲーに転生?

プロローグ

「おっちゃん。これいくら?」


 男は久しぶりの休日を堪能していた。

 日々の仕事のストレスからか最近は胃がキリキリすることばかり。

 そんなストレスを発散するため古びた家屋で営業していた質屋に足を運んでいた。


「おう、兄ちゃん。なかなか良いものに目をつけるね。それレアだよ」


 彼が手に取ったのは、昔発売されオタク達には空前のブームを巻き起こした恋愛シミュレーションゲーム。所謂、ギャルゲーだ。

 ほこりが被ったそのカセットは今で言うBlu-rayなどのディスクとは違い、本体にはめ込むタイプの物だった。


「これ結構するけど……面白い?」

「まあ、どうだろうね。今は出回ってないゲームだからの。昔のもんだからバグが多いとか」

「確かに、ね。今みたいにアップデートでどうこうって時代じゃないから仕方ないけど」

「で、兄ちゃん買うかい?」

「ああ、試してみるよ」


 男はそのカセットと引き換えに8400円を支払った。今どきのゲームと同じような値段設定に若干引くも、面白いだろうと希望を抱いて購入したのだ。


 さっそく家に帰ると、押入れをゴソゴソと探る。普段使わないからとダンボールに詰め込んだ古びたゲーム機。コントローラーにコンセント。何もかもぐちゃぐちゃだ。


 そうなったのにも色々と訳がある。


 まずは押し入れが狭い。まあ、一人暮らしなもんだから当然だが収納スペースが極端に少ない。だからあまり幅を取りたくないもんでダンボールに敷き詰めるのだ。


 もう一つの理由としては、今の時代PCでもゲームができるからだ。なので使わない本体とその他諸々は長い期間押し入れに眠るのが必定。


 そのぐちゃぐちゃなダンボールの中から1台のゲーム機を取り出す。ブラウン管テレビに繋げて本体にカセットを差し込むと、能天気な音楽と少しノイズが走る画面が映る。

 もちろん白黒である。色などない。


 ポチポチとコントローラーのボタンを押す作業と声優のボイスもないことから眠気が襲う。今の時代のゲームに慣れてると頭に内容が入ってこない。まあ、それだけ近代のゲームは劇的に進化を遂げた、ということだろう。


 大きくあくびをして用意したコーヒーをひとくち。スナック菓子を摘みじっと画面を見る。

 そしてなぜかわからないが、彼の意識はスッと途絶えた。


 気づけば真っ白な空間にいた。


 まるで何もないその空間に一人ポツンっと。


 すると脳裏に響く女性の声。


「世界構築完了。記憶データーの破損……一時処置として一部引き継ぎを開始します」

「ちょ、記憶データ破損ってヤバいでしょ!」


 脳裏に響く言葉に動揺するも、これが何なのかはある程度察してはいた。

 これは俗に言う転生。

 もしくは転移であるのだと。


「引き継ぎ完了。よって……開始する」

「ま、待ってくれ。俺にはまだやり残した――」


 ゆっくりと目を閉じる。


「次に目を開けたときには……多分」


 拳をギュッと握り締め、男は口ずさんだ。


「もし想像通りなら楽しい人生にしたい」と。

 

―――――――

皆様、本当にお待たせしました!!

前回の作品からおよそ2ヶ月が経過し、ようやく新作をある程度書き上げるという……。

うん、ごめんなさい。サボりすぎたかもしれません。


今作も転生ものの作品(ギャルゲー転生)となります。個性的なヒロインと過ごす異世界はどれだけ楽しいか、楽しみですね。


ちなみに1話は本日20時14分に投稿予定


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