第1話 その名、クズトである
俺の名前はクズト・レオドール。
古いギャルゲーのプレイ中意識を失い転生したみっともない男である。歳もまだ20代だったというのにここまで早死するとは予想もしていなかった。
こっちの世界、簡単に言うとあのゲームの世界にきてから俺の朝はとても早い。
日の出の時間になると小鳥が音色を奏でるように鳴き始め、それに釣られるかのように目を覚ます。ちなみに俺は朝型ではない、夜型だ。
だけど無理矢理起こされるのだ。
自然豊かな土地ならではの目覚まし時計に。
「クソ眠い……昼まで寝たいむにゃむにゃ」
そんな俺だが毎晩遅くまでこの世界のことを知ろうと書物をかき集めては少しずつ頭に入れている。まあ、結論から言うとほんとに転生したんだなぁ〜そんな感じだ。
貴族の階級だの、礼儀作法だの面倒にもほどがある。本当に面倒で仕方がない。
先に説明すると俺は〝君に春よ恋~夕暮れの開戦~〟というゲームの世界に転生したわけだ。いかにも昔のゲームって感じの名前だが一応ギャルゲーである。タイトルだけ見れば乙女ゲーと勘違いするかもしれないが……。
まあ、だが現代人からしてギャルゲーに相応しいゲームなのかと聞かれれば、間違いなく皆が首を傾げるだろう。だって時代背景が今で言うナーロッパみたいだから……。
もちろん俺は思ったよ。
「普通、現代が舞台じゃね?」
それにまだ愚痴はあるぞ。
恋愛よりアクション要素のほうが強いとはどういった了見だ。誰かと戦闘した分だけヒロインやその取り巻き連中(モブ友)との好感度が上がる仕組み。さらには恋愛イベントを邪魔するキャラまでいるのだ。
こういうゲームは恋愛イベントを早く見たい人にとっては苦痛でイライラするだろうし、駄作だのクソゲーだの呼ばれてもおかしくない。
簡単なあらすじはというと、主にローズウェル王国という最も文明が発展した国が舞台として描かれている。その王国の首都サンギスにあるローズウェル魔法学園から物語が始まるのだ。レイ(主人公)と貴族令嬢や平民の少女を含む美少女達との出会い。
幾度も剣を交え共に成長し、それはやがて恋心へと変化する。そして夕暮れのなか続く隣国との激しい争い。レイ(主人公)はその美少女達のひとりと戦場で愛することを永遠に誓う。
っていうのが、このゲームのざっくりとしたストーリーだ。一見ロマンチックにも見えるがギャルゲーだ。
ラブコメらしいギャグ、男女のいざこざが満載に違いない。難易度が高いと言えるだろう。
ここで一つ。俺が転生したキャラはかなり特殊である。魔法が使えるわけでもなく、剣術に優れているわけでもない。
だったら容姿はイケメンかって言われると平凡としか言いようがないのだ。
所謂、主人公でもないただのモブなのだ。
この時点でかなり詰んだようにも見えるが。
しかしこれはあくまで序章に過ぎない。
このクズトというキャラ。記憶の限りだとあるヒロインをストーカーするモブキャラである。
そんなキャラに俺は転生してしまったのだ。
まあ、変に目立たずモブらしくNPCっぽい動きをしてれば平穏な日々は送れるだろう。
ストーカーさえしなければだが。
――――――
明日から昼12時14分に投稿します。
とうとう物語が始まったのだと、皆様が読んでくれるかな〜と内心ドキドキしたりもしている作者です。
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