第13話 首都サンギス

 屋敷前から飛び立ち一時間ほどだろうか? 

 

 ローズウェル王国の首都サンギスに着いた。


 ある信者の男が俺達の元にきて知らせてくれたのだ。


「セリカ嬢、首都サンギスに到着とのこと。ここからどうなさりますか? 発着場の警備に当たる者が金をせびってきますが……」

「そうですね……ここは相手の要求通りお支払いしてください。色々と面倒ですからね」

「了解しました! 手続きの方は私がやって置きますので。使者様もセリカ嬢も楽しんでください」

「ええ、あなた達も無理をしないように」


 男はセリカに深くお辞儀をした。

 すると艦内に響き渡る大声で全員に命じた。


「では、皆様! 使者様とセリカ嬢が飛行艇から降りられます。即座に準備を! それが終わり次第、点検に取り掛かります」

「うっす!」

「了解っす!」


 艦内の至る所から返答が聞こえる。

 団結力すごい。


 屋敷で働いてくれているメイド達もそうだが、俺には到底できそうにない。

 だって俺コミュ障だし、人前ではカッコつける癖があるから偉そうに振舞まってしまうし。


 さてと準備もできたようだし、そろそろ降りるか……今日購入する物ってなんだっけ? 

 制服と教材と他になんかあったか?


 俺はアスカにそこらへん諸々確認する。


「なあアスカ。制服と教材以外なんか買うもんあったけ?」

「そうですね……ちょっと確認しますね」


 そう言ったアスカは何やらモゾモゾし始めた。メイド服の内側に手を入れ、何かを取り出そうとしている。しかしたまに聞こえる金属と金属が擦れ合う音は一体……。


 マジか……本当に暗器を隠し持っているみたいだ。紙切れ一枚ならこんな鈍い音がするはずない。この感じだと一つだけじゃない。


 一体、何種類の暗器を持ち歩いてるのだろうか? 


 興味も湧いてくるけど、いざ見て血でも付いてたらと思うと徐々に興味も薄れてくるよな。


「ありました。今日買うものは制服と教材、それと屋敷のようです」

「ようです、じゃない! お、お前、屋敷買うなんて聞いてないぞ!!」


 俺は驚愕した。

 平然と屋敷を買う発言をするからだ。

 おまけにセリカは不機嫌になってるし、めっちゃ凝視してるよ、俺のこと。

 どう説明したらいいんだよ。


「セリカ聞いてくれ、今のは――」

「どうかされましたか? 使者様」

「その、だな……」

「屋敷程度の購入でしたら教団にお任せを。いっそ都市ごと購入するのは――」

「いえ、結構です!」


 こんな大金貢がれたらそれこそ怖いからな。

 それこそ逃げ場がなくなって、いつしか外堀を埋められて俺は借金まみれのクズになる、運命しか見えない。


「そうですか……残念です。では、使者様もアスカさんも首都サンギスに買い物に行きましょうか。楽しみですね! わたくしも訪れるのは初めてですので」

「いや、金出す気まんまん!? まあ、俺も普段から辺境に住んでるから胸が躍るよ。よし行くか!」


 俺はアスカの手を優しく握る。

 その手は温かく、柔らかい。

 しかし手を繋いだのは久しぶりだ。なんかドキドキするな。これも異性として意識しているからかもしれない。


 飛行艇を降りると、俺達は教団所有の黄金の馬車に乗り込んだ。変に目立つ見た目をしているが、かなりの高性能らしく揺れをまったく感じない。

 そして首都サンギスの大通り――さまざまな店が立ち並ぶ場所に向かったのだ。

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