遺物回収者はすべてを捕食する(仮)
美しい海は秋
第1話 変わったものとの出会い
「うわあああああああああ!」
構えていた銃で目の前のものをなんとか撃ち抜く。
「はあはあはあ…」
肩で息を整えながらもなんとか落ち着いた俺は、目の前に落ちている石を手に取った。
石には、お札のようなものが貼り付けられている。
これは封印された証だった。
一つを回収した俺はそのまま次に向かうべく動こうとしたが、その体を突き飛ばされる。
「う…」
「邪魔なんだよ!」
男はそう言葉にしながら、俺が次に向かおうとしたものに対して引き金を絞る。
「おせえんだよ!」
男はバカにしたように俺にそう吐き捨てる。
ただ、俺はそれに反論できることもなく、ゆっくりと立ち上がる。
目の前では、俺以外の人たちが次々と石に向かって銃を撃ち抜いていく。
俺は何もできずにただ、それを見ていることしかできなかった。
「本当に使えないな」
「いるだけで邪魔だよね」
「ああ、ぶつかられて最悪だったぞ」
すべてが終わって帰る車の荷台でそんなことを言われるが、いつものこと過ぎて特に気にすることもなくなっている。
「落ちこぼれは使えねえな」
俺にしっかりと聞こえるように言われながらも、どうしようもないことなので、無視するしかない。
なんとか回収したポケット入った
※
「うまくいかなかったのか?」
「ま、いつものことだからな」
「そういうのを自分で言うのか?」
「仕方ないだろ?本当のことだからな」
俺は親友である
ただ、そんな俺の言葉に智也は呆れたように言ってくる。
「お前なあ…そんな言い方をするのはいいけど、単位を取らないと卒業できないぞ」
「わかってはいる、わかってはいるがな…」
智也の言いたいことはわかっていた。
ここで言っている単位というのが卒業に必要なものだった。
学生にとって必要なものではあるが、俺たちのような少し特別な学生には、特別な単位があるというものだ。
長いのでよくセントラルと呼ばれているのだが、そう名付けられたこの場所に通う人たちは、一応選ばれた人たちというものだ。
選ばれたというのは、生まれつき
いつからあったものなのか、それについてはわかっていない。
一説では人が生まれたときからできたのではないのかと言われている。
それはどうしてか?
簡単に言ってしまえば、
人は願いをもつ。
それは、天候を願うものもあれば、人の欲望を満たすものでもある。
そして、願いには触媒というものが使われている。
多くはお守りのようなものに願いを込めるが、それについては問題ない。
問題があるのは、何も施されていないものに願いを込める行為だ。
今は禁止されている行為ではあるが、それを無視して行う人はいまだにいる。
そして、願いに使われた触媒については、
その
といっても、俺はその中でも落ちこぼれにはなるのだが…
「ちなみに卒業までは後どれくらいの単位が必要なんだ?」
「わからないな。どれくらいの単位がたまったのか、意識すらしてないからな」
「なんだ?オレと同じようなことを言うな」
「よせよ。全く単位が取れていない俺と、単位がすでに獲得済みの智也とは意味合いが全く違うだろ?」
「そんなに違うか?」
「違うだろ!」
俺はすぐにツッコミを入れる。
こんな落ちこぼれとは違い、智也は学園では最強のチームの一つに所属しているのだからだ。
俺とは違ってすでに卒業までの単位を所得済みのため、今も俺にからかうようにして話しかけているだけだ。
当たり前だけれど、俺のように頻繁に学園から出ていくということもないからだ。
少し智也と話をした俺は、立ち上がる。
「なんだ?もう行くのか?」
「しょうがないだろ?単位が必要なんだ。それに、智也、お前にもお迎えが来てるぞ」
「お、みたいだな。途中まで一緒に行くか?」
「遠慮しておく…というか、次の依頼の場所がどこか知ってるのか?」
「知らねえよ」
「だったら言うなよな。場所が違ったらお互いに二度手間になるだけなんだしな」
「言われてみればそうだな。適当にそういうのはなんとかなるだろうって思ってな。それにオレたちが手伝ったほうが依頼は早く終わるだろ?」
「そうなったら、俺がいる意味がなくなるだろ?」
「本当か?そんなことはないと思うがな」
「ま、今のところはそうなるんだよ」
「そういうことにしてやるよ。じゃ、頑張れよ」
「そっちこそな」
俺たちはいつものように別れた。
特に何かがあるわけではないが、いつものようにここからは俺一人での作業になる。
まあ、誰かが俺と一緒に任務を行いたいと言わないのだから仕方ない。
これから行うことというのも、ただのくず拾いのようなものだ。
「普通なら、こんなことをしなくてもいいはずなんだけど…今更言っても仕方ないな」
俺は封印を施されている
封印されているものなので、封印を解いてしまえば、
それを考えると体が震える。
いつものことだが、それに俺はイラつく。
「ちっ、こうなってなかったら俺は…」
普通に学園を卒業できるはずなのに…
そんな言葉が口をつきそうになるのを我慢する。
だって、そんなことを言っても仕方ないということをわかっていたからだ。
最初に任務を失敗したときから、俺の体は怖がるようにして震えてしまうのだから…
だから、戦うこともなく、他の生徒が封印を施したものを拾うことによってしか単位は取れない。
といっても、十個で一単位しか取れないので、意味すらないと他の人には言われていたものにはなるのだが、やらないことには単位がもらえないので、こうするしかなかった。
俺はなんとか拾うことを続けていたときだった。
気配を感じる。
すぐに辺りを警戒する。
無意識に
腰に下げていた銃に手をかける。
そして、すぐにそいつは向かってくる。
封印を逃れていたのだろう、石に包まれた球体のようなものがこちらに向かって飛んでくる。
震える体をなんとか抑えながらも銃を手に取ると引き金を絞る。
すぐに銃から専用の弾が発射される。
「ちっ、外した!」
体が震えているため、みんなが雑魚だと思う相手ですら、一撃では倒せない。
弾さえ当ててやれば、いいだけのはずなのに…
俺は向かってくる球体を避ける。
「やっぱりそうなるよな」
俺は再度銃を構え直す。
今度こそは外さない。
俺は震える手をなんとか抑えながらも、引き金を引き絞った。
至近距離だということもあり、なんとか震えながらも
封印が成功したのだろう、
「はあはあ…くそ…」
俺は自分の不甲斐なさに拳を地面にたたきつけるが、手には痛みだけが残った。
そうはいっても、今更だとすぐに切り替えると、封印した
「よし、こんなものだよな。それにしても、完全に封印された後だと思ったんだけどな」
俺は念のために、最後に向かってきた
何もないとは思いながらも、進んでいった先には…
「は?」
思わずそう言葉にしてしまう光景があった。
というのもだ。
そこには全裸で横たわっている女性がいたからだった。
あまりの光景と、その女性の美しさに俺は戸惑いを隠しきれないでいると、女性はゆっくりと目を開ける。
「ご主人様、おはようございます」
そして、俺に向かってそんなことを言うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます