第42話

今日はマリーベルが私に会いに来る。


まさかこんな日が訪れるとは。


あぁ早く会いたい…

可愛いマリーベル。


神殿へ向かった時は胸が張り裂けそうだった。


気分が浮かれていたのは一瞬だった。


なんということだ…



「失礼致します。アーサー様ミシェルです。ローガンよりこちらにいらっしゃると伺って…どうされましたの?」


「あぁ、ミシェルか…どうもこうもない。見ての通りだ。」


私は机にうつ伏せていた。


「ふふふ。まさか失恋でもなさったの?」



机から起き上がると気になっていたことを問いかける。


「そうだ、ミシェル。そなたはマリーベルに会いに行くと言っていたな。一体何を言ったのだ?マリーベルから、そなたと幸せに などと言われたではないか!」



ミシェルは悪びれた様子もなく平然としていた。


「ふふふ。あら、マリーベルさまが。そうなんですの?

私はただ、アーサー様の婚約者に相応しいのは私とあなたとどちらかしら?とお尋ねしましたの。」


「はぁ?なんだと!おかげで誤解されたではないか」


「アーサー様。マリーベル様のお気持ちをお知りになりたかったのではなくて?

この質問をされてマリーベルさまが嫉妬なさらなかったのなら、大人しく現実を受け止められてはいかが。女々しいとますます嫌われますわよ。ふふふ」


この私が失恋だと?認められるか。


「それに、私の目からみて、お兄様と一緒にいらっしゃるマリーベル様はとても幸せそうに見えましたわ」


「ぐぬぬっ。ニコライ…

ニコライに…私は負けたのか」


「アーサー様。そうそう。私に借りを返してくださいませ」


「借りだと?

あぁ、そういえばそう言う約束だったな。」



「それに、アーサー様にとってもマリーベル様の好感度を上げる機会になると思いますわ」



「それは本当だろうな?」


「こちらを後でご覧になられてください。神殿の不正の証拠です。」


私は書類を受け取った。

「よく手に入ったな。分かった。

後で確認しよう。出所は信用できるのか?」


「ええ。アーサー様。

証言に協力する代わりに、その方の罪を問わないでくださいませ」


ミシェルは真っ直ぐに見つめて頭を下げた。あのミシェルが私に頭を下げるなど珍しい。


「不正に加担している者を見過ごせと?」


「どうか、アーサー様の先見の明により聡明なご判断を」



「約束はできないが考慮しよう」



ミシェルは静かに退室した。


この書類は…


そう言うことか。


はぁ…


私は、聡明なのか?

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