第10話 ニコライ視点

「失礼します。」


ノックをして部屋に入ると神官長は机に向き合っていた。


「ニコライか。どうした」


私の姿を認めると作業を中断して、鋭い視線を送ってくる。

この神官長は苦手だ。


「マリーベルさまが到着されました」


「そうか。着たか。断りたいのが本心だが、マーティン侯爵より多大なご寄付をいただいておる。それに…わしのコレクションの完成に不可欠だからな。

それで?

話しは伝えてくれたのか?ニコライ。

お前に頼まれて、断る令嬢などいないだろう。」


欲深い神官長は、事あるごとに寄付を取り付けてくるように言ってくる。


それなりに容姿が整っているという自覚はあるが、それをこんな事に使われるのは虫唾が走る。


まぁ、あとしばらくの辛抱だ。


「マリーベルさまは、噂とは違いだいぶ天然な方だと…。

全くご興味ない様子でした」


「なんだと?お前の伝え方が悪いのではないのか?

それとなく伝えたのだろうな。

あからさますぎたのではないか?

おかしいな。女神像を着飾ることは、社交会の流行にもなっている。てっきりご寄付くださるかと思ったのだが…」


「派手なことは、苦手なようでした」


「なぬ⁉︎ ならば、目立たない場所をお前がお勧めすればいいではないか。

お前の容姿は武器であろう。

なんとかしてたらしこめ!


あの女神像を、4つの侯爵家からの贈り物で着飾るのだ。

王家も羨むことだろう。


わしのコレクション…ふはは! 

完成までもう少しだな。

ニコライ、分かったな?」


「善処します

それはそうと、マリーベル様をお通ししても?」


「なんだ、待たせているのか。さぁ、噂に聞く悪女の顔を拝見するか」


「神官長、マリーベルさまをそのように呼ばないでください」


「なんだ、ニコライ、お前の方がたらしこまれたか。まぁ何でもいい。お通ししろ」


深呼吸をして怒りを何とか抑える。


神官長には軽く挨拶だけでいい。

マリーベルさまをすぐに連れ出そう。


昂った感情を押し込めるように、拳を握りしめてマリーベル様の元へと向かった

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