陰キャぼっちの俺が異世界転移で学校一の美少女たちとパーティーを組むことになった件

Yuki

第1話 異世界転移は突然に

「はぁ……また今日も始まっちまった」


 俺は教室の窓際の席に座り、ぼんやりと外を眺めながらため息をついた。御影学院高等学校は、全校生徒1000人以上が通うマンモス校だ。


 1クラス40人がひしめき合う教室は当然のように騒がしい。朝のホームルームが始まる前から、クラスメイトたちはいつものようにそれぞれのグループに分かれて、雑談に花を咲かせる。


 俺?もちろんその輪には加わらない。いや、加わりたくないってわけでもないが……気がついたら、いつの間にかこのポジションに定着していたんだ。俺みたいなやつを陰キャぼっちって言うんだろうな。


 俺の名前は鈴木蓮すずきれん。高校二年生で自己評価は、平凡な陰キャ。特に目立つこともなく、ただただ静かに過ごすことを心がけている。


「蓮、今日も元気ないなぁ」


 後ろから軽く肩を叩かれて振り返ると、そこには唯一俺に話しかけてくれる友人の佐藤がいた。陽キャのオーラを漂わせている彼は、クラスで割と目立つ存在だ。


 こんな俺にもよく声をかけてくれるのはありがたいが、彼とは正反対の性格なので、正直、会話に困ることが多い。


「いや、いつも通りだろ。俺は静かにラノベが読めればそれでいいからさ」


「そんなこと言うなよ。せっかく青春真っ只中なんだからさ。もっとこう、楽しいこと見つけろよ」


 佐藤は笑いながら、隣の席に腰を下ろした。俺の返事に頓着するでもなく、彼はクラスの他のやつらとすぐに盛り上がり始めた。そう、これが俺の日常だ。みんなそれぞれ自分の場所を見つけて楽しんでいる。俺はその輪の外側で、ただ見ているだけ。


「俺も、こんな毎日がずっと続いていくのかな……」


 そんなことをぼんやりと思いながら、窓の外に目を向けた。見えるのはいつもの校庭、そして遠くには、いつもと変わらない青空。変わらない風景。変わらない時間の流れ。


 だけど、その「変わらない」というのが退屈なんだ。俺の毎日は、ただ同じことの繰り返し。刺激のない日常が、ずっと続いていく。今さら特に期待することもなく、ただ時が流れるのを見送るだけ。そんな風に過ごしてきた俺の学校生活。


「まぁ、俺はこのまま平凡に過ごせればいいか……」


 そんな風に思っていた。


 昼休みになり、クラスはさらに賑やかになってきた。女子たちはカフェテリアで新しく出たスイーツの話題で盛り上がり、男子たちは最新のスマホゲームの攻略法を話し合っている。俺は昼食を終えて、教室の隅でスマホをいじっていた。周りの話に興味があるわけでもなく、かといって参加する気もない。


 退屈な日常を紛らわせるために、俺だけ一人ラノベの世界に没頭する。


「ねぇ見て! 生徒会長の麗華様よ!」

「下の名前で呼ぶなんて失礼よ! 高嶺様でしょ!」


 クラスの女子が廊下を見てキャーキャーと騒いでいる。このマンモス校で知らぬ者はいないとされる高嶺財閥のご令嬢、三年生の高嶺麗華たかねれいか。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能で完璧主義。


 どっかの馬鹿が盗撮してSNSに投稿したところ、一日で100万いいねついたという伝説を持っている。間違いなく日本一の美少女だ。


「副会長の玲王様よ! 今日も素敵……」


 生徒会副会長を務める、三年生の御影玲王みかげれお。御影学院高校理事長の息子で、超がつくほどのイケメン。常に冷静でその圧倒的な存在感は、まさに生徒会を支えるに相応しい。高嶺麗華と付き合っているという噂もある。


「氷月さんと爛漫ちゃんも一緒だ!生徒会のみんなって仲いいよねー」


 書記を務める二年生の氷月雪乃ひづきゆきのと、会計を務める一年生の天神爛漫あまがみらんま。言うまでもなくどっちも大企業のお嬢様で顔面偏差値もトップレベルだ。


 うちの生徒会のレベル高すぎだろ。まあ俺には一生縁のない四人だろうな。


 昼休みが過ぎ、午後の授業も相変わらずの退屈さ。先生が黒板に書き込んでいる内容は頭に入らないし、教科書を開いていても目が滑っていく。ふと時計を見ると、授業が始まってまだ10分しか経っていないことに気づき、思わずため息が漏れる。


「早く終わらないかな……」


 窓の外に目を移すと、風に揺れる木々の枝がなんとも平和に見える。あの木の下で、のんびり昼寝でもしていたい気分だ。でも現実は、教室で眠気と戦いながら無意味な時間を過ごすだけ。


 こんな毎日がずっと続いていくのだろうか――。俺は、またぼんやりとそんなことを考えた。


 放課後、教師たちが全校生徒を体育館に集めるというアナウンスが流れた。普段なら「なんでまた?」と思うところだが、どうせ何かしらつまらない連絡事項だろうと決めつけ、俺は適当に最後列の席に座った。誰にも見られず、ただ時間が過ぎ去るのを待つのが一番だ。


 集会が始まってしばらく、校長先生が何かしら話をしているが、正直言って全く耳に入らない。だって、どうせつまらない話なんだろうし……。と、そんなことを考えている時だった。


 突然、体育館の天井が強烈に光り出した。


「……え?何これ?」


 俺は思わず目をこすり、周りを見る。クラスメイトたちも驚いている様子だ。光は次第に強くなり、まるで天井が崩れ落ちそうな勢いだ。いや、そんなバカな。これってまさか、異世界転移とかじゃないだろうな?冗談だろ?


 しかし、光はどんどん強くなり、気がつけば俺の全身が光に包まれていた。そして――


 次に目を開けた時、そこは見知らぬ場所だった。


「……え、嘘だろ?」


 目の前には、豪華な宮殿のような建物の内装が広がっていた。全員が驚いた様子で周りを見渡しているが、どうやら全校生徒が一緒に転移しているらしい。俺たちはまさに、異世界に飛ばされたのだ。


「マジかよ……これって、マジで異世界転移なのか!?」


 俺は突然の出来事に現実を受け入れきれず、ただその場に立ち尽くしていた。

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