第12話 探索
「ごめんなさい……八つ当たりして……」
「ああ、いいよ。大変だったみたいだし」
「優しいのね……」
「あ、ああ、まぁ……色々と」
別れた彼女との失敗した事を色々考えていた……なんて言ったらまた機嫌悪くなりそうだもんな。
ナオエさんは落ち着いてきたみたいだな……ストレスがものすごい溜まってたみたいだし……さてっと、そろそろいろいろな資源を確保するために探索しないとな。
とりあえず使った分の水の確保と、新規の入れ物の確保をしないと……人は一日2リットル飲まないと駄目とかだったっけ? 二人だから4リットル? 運動してるからもっと必要か?
俺は地図を表示させて昨日の川の位置をチェックする。恐らく少しずれた位置でも川はあるだろうし、別の廃村的なものもあるだろうしね。他のプレイヤーの根城に行くよりも文明の跡があるってわかれば色々と探した方が良いだろう。
「何をしてるの?」
「地図を見てる。移動してきたところは自動的にマッピングされるんだ」
「え? ほんとに……あれ? 見れないよ?」
【地図やUIは他のプレイヤーから見れない仕様になっています】
「え、そうなの? なんか見れないって、ほかのプレイヤーのものは見れないってさ。……見せる事はできるの?」
【残念ながら共有はできないみたいです。頑張って絵や座標で伝えるしかありませんね】
「なるほど……アーゼさんありがとう」
【いえいえ♪】
アーゼさんはなんかうれしそうだけど……
「……今の、私じゃなくて、ナビと話してたのよね?」
「そうだよ? 最初からいろいろとアドバイスしてくれるからほんとに助かってるんだよね」
「そちらのナビの声は聞こえないのね……私も色々聞いてみようかしら……話しかける事無かったかも……」
俺は仕方がないので地面に地図をざっくりと書いていく。
ナオエさんも地図を表示している様で照らし合わせてみているようだ。
「っと、ここが水を汲んだところ、小妖魔がいたところだね」
「絵、上手だったもんね……それにしても……大分近いのね……すぐそこじゃない?」
「そ、そう? 結構遠かったような……じゃぁ、大丈夫か。んで上流か、下流を探索してみたいんだけど
」
「わかったわ……上流は私が逃げて来た方だから大型の獣がいるかもしれないから……下流ね」
「おっけ。んじゃいってみるか……」
ナオエさんがすぐこそと言っていた理由はすぐにわかった。
足を伸ばし一気に移動したり、伸びる手足を使ってぴょんぴょんと高低差をすっ飛ばす様に伸ばし移動していく……まるでどこかの巨人を倒すマンガの様だ。俺と出会った時は……SP使い過ぎでへばっている状態だったんだな……
大分先に行って偵察してくれるようで、こっちにこいってジェスチャーしてる。
なんかとてもうれしそうな表情をしている……
一瞬、中学時代を思い出してしまう。
俺も急ぎながらもなるべく音を立てない様に彼女を追いかける……ってかなんかおかしいくらい敵性生物に会わないな……
ナオエさんが何かを観察して木の枝から動かなかったので、例のごとく『固定』を駆使してスルスルと登っていく。割と早くなったと思うけどナオエさんの『伸びる』には負けてしまうな……あっちは一瞬だからな。
「なんかあった?」
「うん。水場……川、結構広くて浅いね」
「水量が少ない感じだよね……あの感じだと雨が降ったら一気に増えそうだけど」
「? なんでわかるの? 」
「水の流れた跡あるでしょ? ほら、高い木が一定の幅ないでしょ?」
「なるほど……あ、水、汲んどく?」
「そうだね」
「あと……ちょっと汚れ落とせないかな……私たち多分……かなり汚いよね?」
「……確かに、匂うかもね……」
周囲を警戒しながら木を降りて川へと近づく。川近辺は高い木があまりないので見晴らしが良いんだよね。こちらから相手も見つけられるけど、相手からも見つかりやすいってわけで……
ペットボトルに水をフルに汲んだあと、試しに鍋に水を入れた状態で四次元収納ポーチに入れてみる。
入ったよ。なんかすごいチートだな、これ。
ナオエさんもマジか!! って表情になってるし。
「ねぇ、布みたいのもってない? タオルとか?」
「うーん。無いなぁ……あ、ちょっとまってね」
俺は四次元収納ポーチから廃村で拾ったシーツらしきものを取り出す。サバイバルナイフで切り分けて渡す。
「……あまりきれいじゃないわね……って貰っておいてなんだけど……」
「俺もそう思うよ。ちゃんとした……生きてる村があればいいんだけどね」
「人間じゃない村は見たけど……本当に人間いるのかしら……」
「上流にはいないのか……」
ゴワゴワした布切れを水に浸して絞り体を拭いていく。ちょっと拭くだけで汚れが……布を水につけて絞りながらも体をどんどん拭いていく……肌の色が変わるレベルだな。このゴワゴワ感が汚れを取ってくれてるのか?
ってかこのゴワゴワじゃ肌が荒れそうだな……
ふとナオエさんの方を見ると、上半身がスポブラの様なものだけになって色々なところを拭いていた。筋肉が付いた綺麗な体をしている……割とスポーツ得意な娘だったものな……
目が彼女とばっちりと合う。
「……あんまりまじまじと見ないでよ……」
「ご、ごめん……」
「生き返った気分になるわね……ありがと」
「お、お、おおう」
「なにそれ……」
生きる事に夢中で禁欲生活が続いたせいか、異常に興奮をしてしまった……パンツの中も拭きたかったが……今はできないな……洗濯もしたかったが、替えのないこの状況では無理だな。
探索して服もゲットしないとか……たまにチラチラとのぞき見をしてしまう……視線が合って微笑まれてしまった……くそっ……さすがにアラサーにもなれば余裕が出るのか……見た目は女子高生なのに。
俺たちはとりあえず汚れたままの探検家の服を着て探索を続ける準備をする。
下流域を目指し、もう少しましな容器などが無いか探索をしようと話し合っていると、突然ナオエさんが俺の頭を押さえつけしゃがみ込む。
真剣な目で喋らないで……の仕草をしていたので素直に従う。
よく見ると対岸の小妖魔が三人が槍や弓を持って歩いていた。
巡回だろうか? 今、俺が持っている槍とほぼ同じものに見えるから、同じ集団なんだろうな……と思っていたらナオエさんの視線は違う方に向いていた。
「どうしたの?」
「静かに……」
しばらくじっとしていると、小妖魔の近くに大きなバス程もある影が動いたと思ったら一匹の小妖魔の頭が消えていた。突然ワニのような巨大な恐竜が出現していた。
「!?」
で、でかい……ってか気配感じなかったんだけど!!!
尻尾を振り回し、周囲にいた小妖魔を吹き飛ばして叩きつけた後、前足で踏みつけ頭に噛み付き引きちぎる。
エグすぎる!
妖魔を簡単に蹂躙する光景に圧倒される俺の服の裾をナオエさんが引っ張る。
「行こう、今なら安全」
「わ、わかった」
俺は腰を半分くらい抜かしながらその場を後にする。凄い弱肉強食の世界だ……なんか恐怖で力がうまく入らない……俺たちは相談するわけでもなく木の上へと逃げる。若干手足がもつれる。
「すごすぎなんだけど、なにあれ?」
「獲物を襲っている時が逃げるチャンスだよ」
「……こんな生活してたんだ……君が冷静すぎててビックリだよ」
「これにプレイヤーが乱入してたりしてたからね……」
「……よく生きられたね……」
「ほんとに……」
俺は若干デジタル音痴な感じのナオエさんと、サバイバル中のキリッとしたナオエさんが同一人物に思えなかった。
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