「バトロワ」無視してサバイバルライフ ~デスゲームに巻き込まれた俺は「攻略」しなかったら最強になってた件

藤明

1章 デスゲームというかサバイバルに巻き込まれた!?

第1話 デスゲームに巻き込まれた?


 俺は不動ふどうカタシ。


 彼女に振られたばかりのアラサーのサラリーマン……心に隙間風が吹いて、虚無感に包まれている。ほんとアホな事をしたもんだ……


 後悔にさいなまれながらも、社畜の俺は、今日も重たい頭と足を根性で動かし、ブラックな雰囲気の会社に向かう。


 いつもの交差点で信号待ちをすると、俺の周りが白く光り輝き……

 ……視界がホワイトアウトして音が消えていった。


 §  §  §  §


 突然、映画の「マトリックス」に出てきたような何もない、真っ白な空間に立っていた。辺りには、俺と同じように戸惑う大量の人影……というよりも人のシルエットが光ってる……


 老若男女、色々な人の声が驚きの声が聞こえる……


「なんだここ??」

「え? 死んじゃったの??」


 まるでスタジアムに集められたかのような、どよめきが空間を揺らす。一体何人いるんだ?


 夢?


 出勤は夢だった??


『はい、みなさん~ご静粛に~夢じゃありませんからねぇ~』


 心の隅まで響く「声」に驚き、俺は思わず声の方向を見る。


 白い光の巨人だ!! ビル程もある大きさの巨人が見下ろしてくる事に驚きながらも、恐れは感じなかった。ざわめきが無くなり静まり返る。


『使徒? 遣わす側だよ。 君たちは死んでいない。隕石が落ちたわけでもないよ。え? そうそう、異世界転移ってやつに近いね。魂のコピーをこっちに持ってきた感じだしね。スキル? もらえるけど……好きなのは選べないからね』


 白い光の巨人は独り言のように話し始める。まるで携帯電話で通話しているかのようだ。

 一人の女性が発言をする。


「すみません、何を言っているかわからないんですけど……どなたと喋ってるんですか?」


『え? ああ、すまない。君たちの思考に反応してしまったよ……まだこの形式に慣れて無くてね……ちょっとサイズ間違えたな……ちょっと待ってね』


 白い光の巨人は小さくなって人間サイズになっていく……だが空中に浮いたままだった。

『ああ、僕は君達とは違う世界の管理者……君達の世界でのカミと言われる存在と思ってもらっていい。君達にはちょっとしたゲームに参加してもらう事にしたんだ』


 カミと名乗る存在は指を打ち鳴らす。


 すると何もない空間に大きな広告……ぼんやりと光るディスプレイが出現する。

 ……ゲームの広告だな、どう見ても。サバイバルゲーム? スキルを強化して最強を目指そう?内容をみるとバトルロワイヤルなのか? どこかで見たゲームを混ぜて足した様な……


 カミとやらはどんだけゲーム好きなの? 


『……ああ、僕の趣味も入ってるね……うん。君達には違う世界の島に行ってもらって「生き残りゲーム」をしてもらう。直ぐに死なない様にサバイバルグッズと備品を支給する上に、優秀なサポートナビもつけるよ』


 カミと名乗る存在はパチンと指を鳴らすと、彼の脇に何やら人間の図解が現れる。

 人の魂か? なんだろこれ? 魂が移動している?


『……後はこっちがメインだ、君達一人一人にユニークなスキルを与える。それぞれが修練を積めば、どのスキルもかなりの強さを持つことが出来ると思う。他のプレイヤーが死んだときは相手のスキルを奪えるから、どんどん強くなる仕組みさ! インフレバトルを楽しんでくれ!』


「やば、リアルバトルロワイヤルか?」

「スキル……スキルはどんなのあるんだ?」

「ちょっと待ってくれよ! スローライフじやないのか!」

「生き残るっていつまで???」

「拒否権は無いの?? 殺し合いなんてしたくない! 戻りたいんだけど!」


『拒否権は無いよ。色々と事情があってね……ああ、君達は別に死んだわけじゃないんだ。君たちの魂を一時的に借りているだけだよ。ゲームが終わったら元に戻れるから安心してね』


「あの! ゲームに終わりがあるんですか?」

「元に戻れるんだったら殺し合いしなくてもいいんじゃないの?」

「今日試験なんです! 忘れないうちに返してください!!!」


『あ、あれ?? 予想外の反応だな……』


 カミと名乗る存在は彼の後ろに展開した巨大な説明図を見ながら混乱ぶりに納得したようだ。


 説明図に画像と説明文がリアルタイムに追加されていく。島の中央辺りに黒い石の結晶が描かれたりしていく。うん、すごく分かりやすくはなったけど、理解はしきれないぞ??


『ああ、勝利条件……ルールの解説してなかったな……どうもテスト運用と違うね。……何分、正式運用は初めてだから……ゲームの終了は、この島の中央の黒結晶と呼ばれるものが壊れるか、残りの「スキルオーブ所持者」が一人になった時だ。この条件が満たされると君たち全員が元の世界に戻る選択ができる』


「……それだと苦労するだけじゃないか!」

「さっさと元の世界に戻せ!」


『まぁ、まぁ、そう言うと思ってさ……ゲーム終了時に持っていたスキル一つにつき報酬一千万円を贈呈するよ。頑張って生き残ってね! 後はなんと! ゲーム終了時にスキルを一番多く持っていた人には、持っていたスキルを三つ、二番目の人に二つ! 三番目の人に一つ君たちの世界に持って帰る事ができるからね……さらに! 最後の一人になればスキルをそのままに世界の行き来を許可しよう!! これが最高の報酬になると思うよ!! スキル獲得を目指すんだ。そうすれば君たちの現実の人生を変えること間違いなしさ!!』


 カミの発言にざわめきが強くなっていく。


 一千万円!! 


 もし誰かが、うっかり目の前で死んでくれれば二千万ゲットか……すごいな……誰かが死んだらスキルオーブとやらを取りに行けば行くたびに一千万円もらえるのか!? 貰ったら転職しようか……


「ってことは、黒結晶とやらが壊れるまで耐えれば一千万円か??」

「ちょっと、ほんとですか?! 私、中学生なんですけど、それでももらえるんですか??」

「うっしゃぁ!! 俺頑張る!! バイトなんて目じゃないぜ!!」

「この場に百人以上いるから……10億円は固いのか??!」

「すげー!!!」


「お待ちください、老体でこんなことできるわけないじゃないですか……」

「スキルって……スキルの内容は???」

「どんなスキル持って帰れるんだ??」

「無限収納とかあるのか?」

「身体能力強化だけでもやばいんじゃ?!」


『ん〜良かった。殆どの人はやる気になってくれたみたいだね。助かるよ……転移したらみんなの肉体年齢は18歳にしてあるから大丈夫。条件は同じにしたいからね。あ、スキルは渡しておいたから確認してね。頭の中でスキル確認……って念じれば目の前に表示されると思うよ。性格に合ったものになってるはずさ!』


 ざわめきが唐突になくなり、再び辺りが静寂に包まれる。ここに集まった人間全員がカミの言った事を試しているようだった。


 俺もさっそく頭の中で念じて自分のスキルを確認する。


『固定』


 ……『固定』ってなんだこれ??? 


 文字の様な概念の様な変な文字だ……理解できるが……日本語じゃないのかこれ?

 お? 解説文が表示されている……全部が読めない……


 俺が文章を詳しく読みこもうとすると周囲から驚きの声が上がる。


「うおおお! なんかすげぇ! 『火炎』!? 火の魔法か?」

「『身体能力強化』ってあたり??」

「『剣術』って、俺運動できないんだけど!?」

「『家事』って、家事??? 鍛冶じゃないのですか??」

「『追跡』?? これって強いの?」

「『追跡』? 私の探知とどう違うの??」

「『鑑定』! 来た!! やった!! 当たりだ!」

「『ひとかけらの幸運」……って、これスキルなんですか??」


 何人かは興奮を隠せずに自分のスキルを言ってくれてるな……よくある職業的なものじゃないのか……だとするとこの『固定』は普通なのか?


 周りに聞きたいけど……これって聞いていいものなのか?


「あ、あの!『治す』って、身体がどんな場合でも『治せる』んですか?? 説明文の文字が全部読めないんです!!」


 女性の真剣味を帯びた声にその場が一気に静まり返る。

『治す』を現実世界に持って帰れたら……なんでも『治す』ことができたら大変な事になるんじゃないだろうか……


 彼女の発言の後、誰も言葉を発しなくなった。


 俺と同様の理解をしたんだろう……勝者として『治す』を持ち帰れたら、現実世界で信じられないほどの恩恵を得られることを。


 それと同時に、自分のスキルをしゃべると不利になり、狙われる事になると。



 しばらくの完全な静けさを挟み、間をおいてその場が爆発的に騒然となっていく。


 俺はなぜか気になったので、カミの動向を見守っていた。ふと口元が笑ったかのように見えた。


『……まぁ、色々なスキルを付与しておいたから、向こうで確認し合ってくれるかい……さぁ、旅立ちの時間だ! みんな頑張ってスキルオーブを集めて、島の中央の黒結晶を壊してくれ!! 良い旅を!! 心の震える遊戯を楽しんでくれ!!』


 カミが指をパチンと打ち鳴らすと、部屋が暗くなり、周囲にいる人影が順に、夜の電飾を消すかのように消えていった……


 俺も暗い空間に飛ばされ何も感じなくなる。

 ふと、目の前に浮いた光輝くインターフェースに文字が浮かび上がる。


【キャラクター名を入力してください】


 俺はとりあえず……本名は避けて何時ものハンドルネームをつける。

 念じるだけで文字が入力されていく……


〔 dontmove4  〕


 お、入力できたか、流石にハンドルネームがかぶるなんてないよなぁ……と思っていたら目の前に光が巻き起こり、視界が完全にホワイトアウトした。



 §  §  §  §




 !!!!!


 目を開くと光で眩しい……じゃない!!


 なんだこれ、股の間がヒュンとする!!


 落ちてる?! 落ちてるよ!!


 俺の視界には突然、スカイダイビングでしかみれないような雲が足元に広がっていた。



 何が起きてる!……どうすりゃいいの? これ?!!?




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