第22話「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」
-小鳥遊視点-
最近、というかしばらく前からクラスの女子たちが事あるごとに色めきだっている。
原因は島田栄太郎という別のクラスの男子が、胸元を開けたりと、劣情を煽る行為をしているからだ。
注意しようにも、相手は別のクラスの人間。流石に僕が注意するのは角が立つかもしれない。
なので、彼と同じクラスの風紀委員に注意を促すようお願いしていた。
が、問題の島田栄太郎から改善の兆しは見れない。
なので、思い切って注意をしてみたのだが。
「あっ、ならば言わせてもらいましょう。小鳥遊さん」
「七三吊り目細メガネえっろ!!!!!!!!!!」
同じクラスの大倉さんに絡まれた挙句、僕がエロ……劣情を催すと指摘された。
例えクラスメイト相手でも、出来るだけ丁寧に話すように心がけている僕だが、思わず「お前は何を言っているんだ?」という言葉が喉元まで出かけてしまった。
僕の格好で興奮するとか、もうキミは何を見ても発情するんじゃないのか?
いや、これもダメだな。
くそ、失礼のないように返事をしようと頭をフル回転させているのに、出てくるのは罵詈雑言の類だ。
「そ、そんなので興奮するのは大倉さん、キミだけじゃないか!?」
必死に考え抜いて、出たのはそれで興奮する人は大倉さんだけだと証明する事だった。
同意を求めるために、クラスメイトの女子たちの居る方へ振り向く。
が、目が合った瞬間に、一部の女子たちが気まずそうに目を逸らす。
「あっ、これが答えです!」
「ば、バカな」
いや、そんなはずがない。
そうか、島田栄太郎。もし服装を注意する者が現れた時のために、キミが事前に大倉さんやクラスメイトをかどわして、口裏を合わせるようにしていたんだろ。
そう思い、島田栄太郎を見ると、物凄く申し訳なさそうな顔で胸元のボタンを閉めていた。
そして、目が合った。
「……なんか、ごめん」
「いや、こちらこそすまない」
謝られてしまった。
直前まで疑っていた罪悪感もあって、つい謝罪で返してしまった。まぁそこは良い。疑った件については僕が悪いんだから。
ただ、彼が首謀者ではないとしたら、大倉さんやクラスの一部の女子から僕はエロいと思われてた事になる。
僕はえろくない、だから大倉さんの意見なんて聞く必要がない。
でも、本当は自分が気づかないだけで、ものすごくえっちな格好をしていたらと思うと、顔が火照ったように熱くなっていくのを感じる。
「ぼ、僕のどこら辺が、その、え……校則違反なのか教えてくれるだろうか」
聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥。
もしかしたら、僕の感性が世間からズレている可能性がないわけじゃない。
エロいと思われる理由さえ分かれば、いくらでも手の打ちようはある。
「あっ、良いですよ」
そう言って、自分の机に戻った大倉さんが、カバンを抱えて戻ってきた。
「あっ、言葉にするのは難しいので、概念を心で感じ取ってもらうために、これを読んでください!」
「なめかわくんは舐められたくない???」
概念を心で感じ取れなどと意味不明な事を言いながら、大倉さんがカバンの中から取り出したのは漫画本だ。
表紙には、ちょっと悪ぶってる少年と、七三ヘアーにメガネをかけた少年がいがみ合ってるイラストが描かれている。
タイトルと表紙からして、悪ぶってる少年がなめかわくんなのだろう。
「あっ、この漫画の委員長を見れば私が何を言いたいのか分かるから! あとなめかわくんと委員長の絡みはえろ可愛さがやばいんですよ。なんかこの2人の関係って島田君と小鳥遊さんに似てるから、もしかしたらデュフ、そういう展開に発展したりするのかなとか思ったりしてデュフフ。フヒッ」
矢継ぎ早に、次々と言葉が飛び出す大倉さんに圧倒され、半ば強引に漫画本を渡されてしまった。
大倉さんから借りたなめかわくんは舐められたくないは面白かったが、大倉さんが何を言いたいのかは全く分からなかった。
――――――――――――――――――――
もし面白いと感じましたら、お気に入り登録、評価や感想、レビューを頂けますと、とても嬉しいのでよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます