第8話「男性 流行ファッション」
「さて、困ったぞ」
帰宅し、机の前で頭を抱える。
何が困ったって、京に「明日は土曜で学校休みだから、買い物に付き合って」と言われた事だ。
服のセンスって、基本男の子のほうが良いからと言われ、安請負で「任せろ」と言ってしまった。
この貞操が逆転した世界では、女性よりも男性の方がファッションセンスは良いと言われている。
確かに動物で派手なのってオスが多い。メスを引き寄せるために。
逆にメスは派手なのが少ない。子供を産み、育てるときに目立って天敵を引き寄せないために。
だから、生物学的に考えて、綺麗に着飾るのはオスが多いから、男性の方がファッションセンスが良いのは当たり前みたいな理論を見た時は納得しかけた。
それが正しいのかどうかはこの際どうでも良い。
問題なのは、俺にファッションセンスというものがない事だ。
流石に全身黒づくめがNGな事くらいは分かるが、その程度の知識しかない。
とはいえ、ここでどうしようどうしようと言っていても仕方がない。
俺にファッションの知識がないなら、ファッションの知識があるやつに借りる。
そう、インターネットの力を借りて!
人類の集合知であるインターネット。今の時代、インターネットで調べれば大体の情報は出てくる。
おっと、だからと言って過信は禁物だぜ?
以前「美容院に初めて行く時はどうすれば良いですか?」と相談したら「マイシャンプーを持って行け」とアドバイスを貰い、実際に美容院に家のシャンプーを持って行って大恥をかいた事がある。
嘘を嘘だと見抜けないマヌケには、インターネットは難しい。ここテストに出るから、ちゃんとメモっておけよ。
「ふう……」
などと脳内で一人ハイテンションになってみる。
いや、確かに服買いに行くのはちょっと、いや、かなりハードル高いかもしれないよ?
でもさ、京と一緒にお出かけだよ? デートじゃん? デートじゃん!
京とデートするためなら、俺はファッションの勉強だって辞さない。
早速スマホで検索画面を開き『男性 流行ファッション』で検索する。
京の服を買いに行くのなら女性の流行ファッションを調べろって?
今から京と出かけるために、どんな服装が良いかを調べるんだよ。言わせるなよ恥ずかしい。
『オタサーの殿ファッション決定版』
「ん!?!?!?」
上げたテンションが一気に下がっていく。
しょっぱなから出鼻をくじかれた。なんだよ『オタサーの殿』って。オタサーの姫の間違いじゃないのか?
いや、貞操観念が逆転してる世界なんだから、囲うのが女性で囲われるのが男性。だからオタサーの姫じゃなく、オタサーの殿になるのか。
「ふ、ふぅむ……」
正直、それは見なくても良いと思う反面、こう思ってしまう。
オタサーの殿っぽい見た目をして京の隣を歩けば、オタサーの殿である俺に視線は集まるだろう。主にオタサー女性の。
そして俺が京と離れた際にナンパにあう。正直それだけでも大変魅力的ではあるが、俺の狙いはそこじゃない。
モテる俺を見たら、京は焦るはず。隣を歩く幼馴染がモテモテだったら、そりゃあ意識するなってのが無理な話だ。
意識さえさせてしまえばこっちの物。後は焦った京が俺にアプローチしてくるはずさ。
「そんな上手くいくわけないだろうけどな、っと」
まぁ、例え上手くいかなかったとしても、ファッションをどうにかしたいという目的は果たされるんだからそれで良いさ。
オタサーの殿ファッション決定版というリンクを押してみる。
「小悪魔系ガーリッシュファッション???」
リンク先の見出しにデカデカと書かれた文字を読み上げるが、全く想像がつかない。
ゆっくりと画面をスクロールしていくと、一枚の画像が表示された。
女児が着るようなカラフルな上着に、ポップ感あふれるカラフルな短パン。
それを着た男性が、あっかんべーをしながら小悪魔のような笑みを浮かべていた。
「横シマ模様の見せトランクスで、邪な目線を独り占め???」
短パンからハミ出るトランクスは、見せパンならぬ、見せトランクスか。なるほどね。
そうだよね。貞操が逆転した世界なんだから、こういう格好に行きつくのは当然だよね。
流石にこれは無理だ。
もうちょっとマシな格好はないか色々調べたが、結局一番最初に出てきたやつが一番マシだった。
もしその恰好をすれば、京がお前に振り向くと言われても、悪いが無理だ。もしもの時の最終手段として一応考えてはおくけど。
「仕方がない。無難な服でも着ていくか」
もしかしたらファッションを学べるような漫画があるかもしれないから、大倉さんにメッセージで「実は今度出かける時に何着ていくか困ってて」と送ったら、クッソ長文でどんな着こなしや組み合わせが良いか送ってくれた。
悔しい事に、ビックリするほどセンスが良かったから服装選びに大いに貢献してくれた。
貸しは作りたくない、というか作ったら怖かったから、大倉さんのお勧めの服を着た際に、胸チラ写真を撮って送りつけておいた。
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