第5話 聞き耳
セーフ!無事だった!
そんなにこの世界に嫌われてるわけじゃなさそ。
図太くも、ぐっすり。
地球にいた時のこだわり寝具はなんだったのだ。
さて、今日やりたいことは、2つ。
一つ目は、探検だ。
この世界に降り立ってからまだまともな動物にすら出会っていない。それがありがたいことなのかもしれないが、できれば、意思疎通のできるやつに出くわしたい。
二つ目は、食事の摂り方の模索なり。
やはり、食事の方法がわからないというのは話にならない。
我ながら、『やりたいこと』じゃないだよ!
生死がかかってる奴の台詞とは到底思えない。
悠長さが僕の長所であり、短所である。
うん、憎めない。
しかし、こんなことになるのなら、僕に以前ついていた親指先輩に食事の方法くらい聞いとけば良かった。。。
まぁ探索して、目に入ったものをとりあえず、体内に入れる試みを繰り返す方針でいく。
早速、具合の良いもの発見。
ケース1 青い木の実
毒とかは知らない。死にはしないはずだ。
なんてたって親指だから。聞いたことある?
親指が死んだの。
まずは表側で擦ってみる。イメージできる?
爪じゃない方。
普通に無理だった。
なんかちょっとでも内側入ってくれないかなと思ったけど、体の一部が汚れただけだった。
歩く。歩く。右も左も同じく緑で、帰ること能はず。
無問題。別に帰っても意味はない。
ここで、地表近くの魅力的物質に目が止まる。
ふ〜ん、うまそ。
ケース2 椎茸
…に似てる。食える。確実に。
ここで秘策投入。
自分の体を分析し、自分の部位の中で1番口っぽいところはどこだろうかと考えてみる。
食べ物が入りそうなのはどこか、と。
結論は、僕の頭のてっぺん、つまり爪と指の間である。
やはり21世紀のエジソンと謳われて久しい(最初で最後)我が脳みそたるやエジソンが如くである。
早速、きのこに向けてダイブを決める。
これで解決してくれたら、めちゃ嬉しい。
…失敗である。仕方ない。
例の彼も多くの失敗を伴ってきたようだし、エジソンの名は譲る気はないが、少々へこむ。死にまた一歩。
ここで思う。
斜面を制そう、と。
この緑に囲まれた土地はなかなかな急勾配になってる箇所もあり、山の中にいるんだと早くから認識していた。
栄養の補給が困難な状態で、エネルギーの消費をなるべく抑えるために避けていたが、長上から見下ろすことで、人間がいるかは知らないが、人里を見つけられたりするかもしれない。
これが栄養補給等々の解決になるかもわからないし、見つかったらすぐに殺されてしまうかもしれないが、やらない餓死よりも、る串刺しである。
この親指の体はどういう原理か、移動手段がジャンプと滑るように進むやり方と二つある。
ジャンプしながら進むのは滑るように進むより速いが、いかんせんつかれて仕方がない。
エネルギーが焦点にあたる今、より安全なのは、滑り登る一択だろう。
辺りがまた暗みがかかってきた。
明日に備えて寝てもいいが、一息で登ってしまうことを選択した。
昼の星が沈んで、2時間ほど経ち、とうとう山頂に立った。
登り切った。。。
達成感も束の間。
眼前、飛び込んできたのは今までで最高で最悪の光景だった。
まず、喜びたいのは、お目当ての集落があったことだ。夜にも関わらず、灯りがともっていて、眩しいくらいである。
しかし、そこには人差し指に虐げられる親指の姿があったのだ…。
風に明かりの火が吹かれ、集落全体の影が揺れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます