私たちの恋は少し変わってる

@aohota

第1話

春の桜は緑の蕾へと変わり始め、春から入学し、制服と教室には馴染み始めた4月の下旬。


「リア充め……。爆発しろ」


学校までの通学路、進藤亜弥は中学からの付き合いのある東貴洋と一緒に歩いていた。


「春は出会いの季節っていわれてますけど、多いですね」

「非リアに見せつけてくるからな」


東先輩は仲良さげに腕を組みながら歩いているカップルたちに嫉妬を込めた舌打ちをする。


私の制服のリボンの色は新入生の赤色で東先輩は1つ学年が上の緑色のネクタイをしている。


「うちのクラスでも○○君が好き。あの先輩は気になるよねって話しているのを良く聞きますよ」

「俺のことは?」

「運動部が興味対象みたいで、文化部の私たちは入ってないですよ」


東先輩は高校2年生にしては細身の体型をしており、スポーツもそこまでできる方ではないので、女子からの評価は低いらしい。


「ってか、進藤はそういう話に興味ないの?」

「私は興味がないというか、人を好きになったことがないですから」


私は今までの人生で人を好きになったことがない。好意を持たれたこともないし、心の中に小さな空白として存在していた。


「だって、家族や友達よりも優先しないといけないんですよ」

「進藤としては彼氏ができると苦労が増えるってこと?」

「疲れちゃいそうだなって」


友達や家族には恵まれているし、今の生活が続くなら恋愛はしなくてもいいのかなって思う。


「俺は異性に入ってないと?」

「先輩はそうですね……」


東先輩は期待を込めるような目で私の方を見る。


「……付き合いのある先輩……かな」


先輩は話しやすいと嫌いではないんだけど、異性として認識しているかと問われたら、そこまでの関係ではない。


「そういえば、最初の頃は無愛想だったもんな……」

「あの頃は人と関わるの避けてましたからね」


中学時代、親の転勤が続いた事で、私は周囲との関わりを避けるようにしていた。


(この人がいなかったと思うと、今も昔の私のままだったかも)


無愛想の私と今の私、どちらが好きと聞かれたら私は後者を選択する。


「今も昔の名残はあるけど」

「人はそんなに簡単には変われないってことです」

「たまに俺をゴミを見る目で見てるぞ」

「……気をつけます」


朝の時間帯、先輩と話しながら、私たちは学校に登校した。

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