憑依体質の桔梗さん
@Yu-ta_kamizono
第1話
【桔梗さんの憑依体験】
私の知り合いからの紹介で、1人の女性が訪ねて来ました。
ここでは仮名で『桔梗さん』と呼びましょう。
桔梗さんはどうやら憑依体質のようで、日頃から頭痛があったりなぜか通りたくない道があったりしていたそうです。
また、子どものころから不思議な夢を見るので夜あまり眠れず、最近は特に自分自身の現実との境目が分からなくなって困っているということでした。
桔梗さんの場合、シンクロしてしまった霊の記憶が蘇ります。
まるで自分の体験のように、道順を思い出すかのようにその時の映像が頭の中に流れるのです。
過去に憑依した霊たちの供養の為にもお話にしてくださいということでしたので許可をいただき、彼女の憑依体験や夢の内容をこちらに書き記していきたいと思います。
1 憑依体験『女中奉公』
桔梗さんは嫁ぎ先の家である体験をします。
それはある日を境に嫁ぎ先の本家がとても苦手になり、その本家のおじさんに会いたくないし鳥肌が立つくらい嫌悪感を抱くようになりました。
ある夜、寝る前にものすごく悔しい気持ちになり、本家のおじさんのことを本気で恨みました。
それは本家のおじさんというよりも、過去に似ている本家のご先祖様がいらっしゃったようでした。
十代中ごろでしょうか、女の子は仮名で『さと』と呼びます。
さとは隣の村からこの土地の庄屋さんのお屋敷に女中奉公にやってきました。
まだ着物で生活をしている時代でしたから奉公は二年ほどの話で、嫁入り修行にもなるので当時では珍しくないことでした。
さとはかわいらしくよく働く女の子でした。
数ヶ月経ったころ、庄屋さんに頼まれて蔵の物を取りに行きました。
気付くとそこには庄屋さんがいて、取って来てと頼んだ本人がいることを不思議に思いつつもこちらでよろしいですかと頼まれ物の確認をしました。
にこにこしていた庄屋さんが突然さとに抱きつき、乱暴をし始めました。
さとは抵抗しましたが、助けを求めても蔵の中で外に声は届きません。
さとは悔しいことに手籠めにされてしまいました。
泣きながら暗い湯に入り、体を洗い流しても手籠めにされた記憶は流れませんでした。
翌日、奥様に呼ばれたさとはひどい仕打ちを受けました。
奥様に問い詰められた庄屋さんが、さとに誘惑されたと言い始めたのです。
以前から愛嬌があり、庄屋さんにかわいがられているさとの姿を知っていた奥様は、さとにきつく当たりました。
そして庄屋さんは自分のしたことが明るみにならないように噓を取り繕って、他の若い使用人を使いさとの命を奪って庭に埋めてしまいました。
さとの家から、一向に連絡もなく盆暮れ正月休みに家に帰ってこない娘を心配して何度も問い合わせがありましたが、庄屋さんは恋仲になった若い男と出て行ってしまったと言い張ってうちも迷惑しているのだと言いました。
さとの両親はそんなはずはないとかなりさとを探しましたが、見つかるはずがありません。
そんな悔しい思いを憑依しやすい桔梗さんに伝えに来たのです。
桔梗さんはその時、自分が手籠めにされた感覚も命を奪われた瞬間も共有してしまい、悔しさで震え泣きました。
自分の夫のご先祖様がそんなひどいことを…本当かどうかの確証もありませんし、桔梗さんもこの話を誰にも打ち明けることができませんでした。
桔梗さんはまずさとさんを実家に帰してあげたいと思い、お水と小さめの塩結びをお供えしてお経を唱えました。
さとさんは誰にも言えずにいた思いを桔梗さんに分かってもらえたことで気持ちが少し軽くなったようでした。
そして桔梗さんは車で当時の隣村、さとさんのご実家の方面を走りました。
とある田んぼ道の途中で体が軽くなった時、桔梗さんは送り届けられたと実感したそうです。
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