座頭軍師ー花巻城の夜討ちー

不来方久遠

序章

 その老人は、白そこひのため両眼の視力を失っていた。

 懐刀を取り出し、鞘を抜いた。

 指を開いて左手を床に置いた。

 右手に持った剥き出しの刃が、間隔を置いて開かれた左指目掛けて振り下ろさ

れた。

 親指から鮮血が流れた。

 その切っ先が抜かれて、再び指の間を順番に突いていった。

 その速度が次第に増していった。

 文字通り、血の滲むような努力が重ねられた。

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