第1話 目覚め

「んん………もう朝か」

アラームの音で目が覚める。一瞬このまま二度寝を決めてやろうかとも思ったが、今日は入学式がある。初日から遅刻するわけにはいかない。まだ眠たいが、顔を洗えばいくらかマシになるだろう。そう思いながら俺はベッドから出た。

手早く朝食と着替えをを済ませて、玄関の扉を開けると、そこには俺と同じ制服を着た美少女が立っていた。

「おっそい、何してたのよ」

そう言ってこちらに近づいてくるのは、俺の幼馴染である西原綾瀬。整った顔立ち、大きくはないものの形の良い胸、スラリと伸びた足を持ち合わせた紛う事なき美少女である。クールな性格で、小中と、異性の友人と言える存在は俺くらいしかいなかったが、同性間での交友関係は割と広かった印象だ。なお、こいつは何故か俺にだけ辛辣な時がある。というか大体辛辣だ。まぁそこに助けられた部分もあるから良いんだけど。


「俺は遅くない。お前が早いんだよ」

「私が早く来ないとあんたずっと寝るでしょ」

「おいおい、いつの話をしてんだ?きちんと早起きしてるに決まってんだろ?」

「ふーん、じゃあこれからはアラーム5分おきにセットしてないでちゃんと一回で起きてよね」

「おいお前なんでそれを………!?」


朝に弱い俺は5分おきにアラームをセットしないと起きられない。正直綾瀬が来なかったら余裕で二度寝三度寝してる自信がある。そういう点ではこいつに感謝してるんだよな。


「ほら、早く学校行くわよ」

「おう」

俺たちが通うことになる志鳳しおう高校は、ここから電車で数駅離れた県立の高校で、この辺だとまあまあな偏差値の高校だ。校則も特に厳しいところはなく、自主性を重んじる校風があるので、ここにした。あまり厳しいところは嫌いなんでな。強いて言うなら、男女共に制服のデザインが人気で倍率が少し高いくらいか。こっちはちゃんとした理由(?)でこの学校を志願しているのに、「制服が好き」とか言う理由で受験するのはやめてもらいたい事だな。


「そういえば、綾瀬はなんでこの高校に進学したんだ?」

通学中、ふと近似直線なった事を綾瀬に聞いてみた。綾瀬は普通に頭いいので、もっと上の高校とかも目指せたはずなんだが。

「………進学実績と校風よ。あとは制服が可愛かった」

「おい、そんな理由でこの高校入ったのかよ」

「なによ、あんたも同じような理由じゃない。何か文句でもある?」

「いや、お前頭良いんだからもっと上の高校目指せたのになーって」

「余計なお世話よ」

そこで会話は終わってしまった。なんか目が泳いでたり、変な間があったのは気のせいだろうか。


「…………ふん、私の気持ちも知らないで」


「ん?なんか言ったか?」


「なんでもない。ほら、駅着いたわよ」

「いや、絶対なんか言ったよな?」

「うるさい、なんでもないって言ってるでしょ。しつこい男は嫌われるわよ」

「へいへい…」


そんな事を話していたらいつの間にか学校に着いていた。この学校は三階建てロの字型の校舎で、中央に中庭があり、大きな桜の木が生えている。ここで昼食を食べるのもよさそうだな。


春の陽気に照らされた校門には、桜の花びらが散っていた。




















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