26 国王陛下


(そうだ……国王陛下の具合はどうなんだ?)


 寝室のベッドの上で、やっと気持ちが落ち着くと、国王の具合が心配になってきた。


 運び出された時に見たところでは、問題無いようだったが……不安が積もっていく。


 彼に何かあったら、私は暴走して、怒り狂う魔王になるかもしれない。



(救護室へも、秘密通路は通じていたな)


 危険かもしれない……でも、気になる。


 メイドグローブの下、暗器のナックルを確認した。

 よし、秘密通路で、救護室へ行くことにする。


 ◇


 秘密通路の出口を少し開けて、救護室の様子を伺う。静かだ。


 救護室には、ベッドがたくさん並んでいるが、どれも使われていない。


 一つだけ、水色のカーテンで個室のように仕切られていた。



「国王陛下?」


 救護室は、国王の貸し切り状態だと考え、カーテンの外から、そっと声をかけた。


「いたぞ!」


 しまった。護衛兵が待ち伏せしていた。



「おとなしく観念しろ!」


 護衛兵が、救護室の扉からぞろぞろと入ってきて、囲まれた。


 どうしよう? 操られている護衛兵を倒すか?



「一万ボルト!」


 この魔法は? 護衛兵が、イカズチ魔法の電撃でシビレ、気を失った。


「ニニギ様!」


 水色のカーテンを開けて姿を見せたのは、国王だった。彼が、私を救ってくれた。



「大丈夫か?」


 国王が、私を気遣ってくれる。


「大丈夫です、国王陛下の方こそ、爆発に巻き込まれたのでは?」


 国王執務室は、爆発で、窓が飛び、扉も壊れていた。



「あの程度の爆弾なら、堅牢な机が防いでくれる」


 そうだったのか、あの机には、防御の魔法陣が仕込まれていたのか。


「救護室へ入ったのは、事前に母からアドバイスがあったからだ」


 国王のケガは元女王のフェイクだった。国王が狙われると予想して、手を打っていたようだ。


 私への「生き延びて、国王を支えろ」との命令にも、意味があるはずだ。


 隠れて機会を待てということか。


 国王をこのまま救護室に置くのは危険だ。



「逃げるぞ、付いてこい」


 私よりも先に国王が動いた。


 護衛兵の目が覚める前に、二人で秘密通路へと逃げ込む。



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