第四章 執行
24 濡れ衣
「この騒ぎは何事だ?」
王族専用エリアに戻ると、冷静であるはずの近衛兵が、廊下で混乱状態に陥っていた。
「国王執務室が爆破された」
え! まさか……厳重に守られている王族専用エリアだぞ。
「国王陛下は無事か?」
国王の安否が一番心配だ。落ち着け、私!
「確認中です」
爆弾を使ったとなれば、犯人は公爵だろう。こんなに早く動くなんて。
傭兵を全て倒して、少し油断した。
「犯人は護衛兵なのか? 近衛兵は何をしていた!」
元女王の襲撃に失敗し、次のターゲットを国王として狙ったのだろう。
「国王執務室にいたのも、扉の外を固めていたのも、護衛兵だけです」
やはり、護衛兵……しかも組織立って動いていたのか!
国王執務室の扉は、廊下側に吹き飛んでいた。
中に入ると、バルコニーに通じる大きな窓は外側に吹き飛んでいる。
爆発の中心は応接セットだ。あのカップの受け皿型爆弾を使ったな!
堅牢な机が、何事もなかったように残っているだけだ。
「護衛兵たちは逃げたのか?」
「それが、室内にいた護衛兵は、爆発で吹き飛び、扉の外にいた護衛兵は、壊れたバルコニーから飛び降りた」
「またか!」
襲撃してきた護衛兵は、これまでの深層魅了と同様に、バルコニーから飛び降りた。また、証拠が消された。
「国王陛下を救護室へ運べ、急げ」
近衛兵へ、国王を救護室へ運ぶように指示した。すでにタンカに乗せられていた彼の顔色は……意外と良い。安堵した。
しかし、万が一という心配がある。彼の命を救う事が最優先だ。私も付いていきたいが、グッとこらえ、現場を精査する。
現場の状況から、爆弾が、部屋の中央部で、護衛兵もろとも、破裂したようだ。
「アルテミス、お前を国王陛下襲撃の犯人として逮捕する!」
私が廊下に出ると、大勢の護衛兵が、近衛兵の持ち場である王族専用エリアへとなだれ込んできた。
え? 私が、国王襲撃の犯人……なんという濡れ衣だ!
「邪魔するな、命令だ!」
護衛兵が、私を拘束しようとする。
「証拠など無いだろ」
近衛兵が阻止しようと、もめだした。
「犯人が逃げたぞ」
護衛兵が大声を上げた。
ここで拘束されたくはない。まだやることがある。脱兎のごとく現場を離れる。
護衛兵が追ってくるが、このエリアの構造は、刺客が混乱するように複雑に作られているので、簡単に引き離せた。
「まさか、王族の秘密通路を私が使う事になるとは」
王族用の秘密通路に潜り込み、ここからは慎重に歩を進める。
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