17 腰ぎんちゃく侯爵
「アルテミス、こんな所で出会うとは」
王宮の廊下で、正面に見えた金髪……ピエールと出会ってしまった。
「ピエール侯爵様、お久ぶりです」
一応、カーテシーを執り、挨拶する。彼は、足を止めた。
「国王の専属メイドとして働いているそうだな」
鼻の下に細長いヒゲを生やし始めたピエールは、高等部時代の同級生である。
彼も、カイゼル君と争うようにして、中等部という若さで侯爵を受け継いだ。
二年前の事件について、当事者の一人として、裁判で証言してもらいたい人物ではあるが、会いたくない人物でもある。
「私の妹と、ニニギとの婚約を、早く認めるようニニギに伝えなさい」
これが会いたくない理由だ。
彼は双子だ。妹も学園の同級生であり、貴族の令嬢らしい美人だ。
二年前の事件以来、ピエールは、腰ぎんちゃくとしての才能を開花させた。
公爵をはじめ、多くの貴族たちに取り入り、彼の妹を国王の婚約者にしようと画策している。
すでに、政略結婚として、外堀は埋められてしまった感がある。
「伯爵が亡くなり、護衛兵の指揮は、ピエール侯爵様のお仕事になって、お忙しいでしょうに」
伯爵の権限は、本来であれば、上司であるピエールに全て移譲されるはずだ。
「ふん、護衛兵の指揮は、ゼブル公爵様が直接行なうザマス!」
興奮して、ナマリが出始めた。学園時代からのクセだ。
「国王は、まだ、誰とも婚約するつもりはありませんので、妹様にもお伝えください」
私の感想だ。婚約を断る話は、国王から聞いたことはない。
「ニニギの光属性と、妹の闇属性が合わさることで、陰と陽が上手く組み合わさり、この王国は安泰になるザマス!」
ピエールの言うとおりだ。
太陽から力を得る光属性と、月と星から力を得る闇属性は、互いに依存し合いながら魔法陣を形成し、2つが組み合わさった状態が最高のバランスであり、王国に幸運をもたらす。
(でも、国王には誰とも婚約してほしくない)
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