07 オトリ
「あの男爵の執務室から、新しい魔法陣の設計図が見つかった」
翌朝、国王執務室に呼ばれた私は、国王から捜査状況を聞かされた。
腰ぎんちゃく男爵の執務室には、深層魅了に関する魔法陣について、研究していた形跡があったという。見つけたのは、護衛兵である。
「捜査をかく乱するためのデコイ……オトリですね」
「そして、伯爵の執務室からは、メモが見つかり、自分が黒幕だと書いてあった」
トカゲの尻尾切りというやつだ。逆に、本当の黒幕は、他にいるという証拠だ。
「一連の襲撃事件の捜査が、これで白紙に戻りましたね……」
そう言いながら、私はあきらめていない。
「護衛兵による捜査はこれで終了だ」
国王の言葉で、部屋に緊張が走った。
「そう、にらむな……アルテミスには、隠れている何かを探してもらう」
え、私は、国王を、にらんでいたの? 申し訳ない。
◇
(隠されている何かとは、なんだろう)
王宮の廊下を歩きながら考える。しかし、何かは、何かだ。誰にも分からないから、何かなのだ。
(どこから調べるか……)
こういう時は、祈りを捧げて、頭を整理した方が良いが……
いや、今日は気分転換だ。自分の執務室で、身体を動かそう。いい考えが思いつくかもしれない。
国王専属メイドは一人であり、後輩とか同僚はいない。気楽ではあるが、こんな時は寂しくもある。
◇
自分の執務室、調度品は少ないが、白い壁の落ち着いた雰囲気の部屋だ。
扉にカギをかけ、近接格闘戦を想定して、ステップを確かめる。
まずは4ビート、ダンスを踊れる速さだ。
そして8ビート、ジルバを踊る速さへと上げた。ウォーミングアップはここまでだ。
さらにスピードを上げて十六ビート、通常の格闘戦で使うステップ。
S級の格闘家が使う三十二ビート、目で追うのが難しい。
「元気百二十%、リミッター解除」
リミッター解除は、執行令嬢の秘技だ。
六十四ビートでのステップ、縦横無尽に床の上を滑る。
(よし、鈍っていない)
近いうちに、強敵と拳を交える、そんな気がする。
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