よこしま祓いマイワンワーズ

釣ール

第1話:動けば攻撃されるそんな毎日

*だれかの話



 いつも流れるのは音楽かなみだ

 たまに血と汗がまじる。




 本当はどうしたいかなんていつも決めてきた。

 それでももう自信がない。




 大きな声が街を無意味にひびき、終わらない差別さべつ貧困ひんこん




 たとえ今どき金持ちになっても幸せはたかが知れてる。



 たのむ。

 もう、やめてくれ・・・。







 苦労はつきない人生。

 もし自分も過去に道が違ったらどうなっていたか。





 自分の言葉でだれかの人生にしばられない価値を作るために『マイワンワーズ』は結成された。





 治安維持ちあんいじのためとはいえ6人いる自分たち『マイワンワーズ』の仕事は人々を守ることにある。






 最年少の済役留瑛すみやくさついは2024年19歳男性は人助けについてつねに悩まされつつも決してみなの価値をあきらめずに向き合うよう訓練は欠かさなかった。





 成功者のためだけにある世界ではないからこそ、済役すみやくは人々のために戦い続ける。





 いつか、これから今まで歩いている人生を降りたくなったとしても。









〝よこしま〟と呼ばれている一族がいる。

 一部で人間に感謝されるほど「弱い」と言われる人間を攻撃していた。




 一番最低なのはいつだって人間。

 そうは思っても物価高騰ぶっかこうとうで人手不足だから嫌な人間の依頼も受けないと暮らしていけない。




 フィクションでは人間以外の生物は無敵むてきだと描かれることもあるが実際はイヤイヤ働かされている。





〝よこしま〟はフリーランスとなったモンスターたち。





 そして〝よこしま〟たちにも格差かくさがあって苦しんでいるので仲間たちを守るために働いているのだ。





幸刃にせーば。 お前はいつまで単独行動たんどくこうどうを続けるつもりだ? はあ? 人間への興味? ったくわかった。 そのまま続けてろ」






 結局俺たち二人でまたこの仕事か。

 穴刀あなーとは誰もいない事務所で刀をつきたてる。





 幸刃にせーば快楽主義者かいらくしゅぎしゃで職務を全うしながらいちばん大切な仕事を穴刀あなーとたち二人に押し付けていた。





 なんてサボり方だ。

 穴刀あなーとはある人間のおっさんをマークしていた。




「特に何もしていないのに抹殺依頼まっさついらいか。 だから人間と暮らすなんて嫌だといったのに」





 これもビジネス。

 是助げせーわに連絡し、穴刀あなーとは現場へ向かっていった。








「お前らはもう未来を約束されている。 俺はもう・・・産まれた時から・・・」





 またあの夢か。

 そうだ。

 忘れるわけがない。





 助けられなかった。

 しかたない事情でもなかったからこそ。

 彼の自殺をとめられなかった。




 マイワンワーズのメンバーはだまってゆるしてくれていた。





 それでも俺は忘れられない。

 





 済役すみやくはいつも葛藤かっとうし続けていた。

 悪夢を毎日見ることがあっても明るく振る舞い続けているからか誤解も多かった。





 マイワンワーズに入るころも・・・





 着信音がなった。

 これで目覚めが悪いまま仕事へと取り組むことになる。





 今日も誰かを治安維持のために守る。

 人間以外の驚異きょういから。





 そして人間同士の犠牲ぎせいによって死んだ彼のつぐないのために。





 部屋にかざってある写真には不機嫌ふきげんな彼と何人かの友人が肩を組み、済役すみやくがピースをしていた。





「今日も誰も見捨てない。 行ってくる」





 誰もいないはずのホコリがう部屋で、罪を背負ってマイワンワーズとしての表情をつくり自宅から出勤する済役すみやくだった。









――マイワンワーズの一員として




 マイワンワーズは明るい人間たちが多い。

 多いと言っても俺を入れて六人ろくにんの組織で構成こうせいされている。





 近ごろ『人間以外の存在』が少しだけ明るみになり、治安維持ちあんいじも人間だけの問題ではなくなりつつある。





 人間同士でのトラブルも大概たいがいなのに本当どうしようもない。






 俺は『済役留瑛すみやくさつい』の名刺めいしを手に聞き込み調査を行っていた。





 マイワンワーズしかわからない『ある人物が謎の生き物に命を狙われている』依頼いらいをつきとめてそれを阻止そししようというわけだ。






 その人物は周りからけむたがられていて、マイワンワーズからもなぜ助けるんだ?とか言われてる。






 俺は謎の生き物の正体をつきとめられるからと理由をつけてこの調査を行っていた。






 本当はささいな理由で嫌われている人たちをほおっておけないから。

 過去のつぐないもふくめて俺は人助けを実行する。

 それだけだった。





 調査は順調で、ある人物の家を見つけた。

 ここで少し妙な気配を感じる。





 現代は数多くの生き物が人間としての主張を押し通して無理やり共存している。





 俺はそれ自体否定はしない。

 ただ別の生き物たちの共存へのやりくちは、負の側面を持つ人間と変わらないことに拳をいつもにぎりしめている。






「何の用だ」






 丁寧にたずねたつもりだったのに。

 いや、それもそうか。






「名刺です。 簡潔かんけつにお伝えするとあなたの命がねらわれている。 だから私があなたを守ります」






 太めで眼鏡をかけた男性は声を荒らげて出て行けと俺を追い出そうとする。






「2020年代にもなって働いてない人間に厳しいこの社会で生きてたってしかたがない。 誰にねらわれようがしったことか」






 どうやって説得しようか。

 生きろだとか死んだ方がいいとかそんなこと絶対に俺は言いたくなかった。






 ほんの少しだけ人より誰かがおとっていると決めつける社会とは俺も戦っているつもりだ。






 マイワンワーズの仲間といると自分もひとりの人間だという事実を忘れるくらいに生活は安定している。






 いわば俺は強者にこの人から見られているのかもしれない。





「とにかく自分の手を使わずに死ねるのなら本望ほんもうだ。 はやく出て行け!」






 ならば お望みどおりに してやろう





 俺とこの人は外へ無理やり飛ばされた。

 なんだこの技は?





「さっき名刺をわたしてたな? そこの人間。 俺は穴刀あなーと。〝よこしま〟って言えばわかるかな」






 謎の気配の正体か。

〝よこしま〟は元々自分たちもマークしていた生命体のひとつ。





 今のところ人間から危険と判断されていない生命体だ。





 なぜここまでダイレクトに攻撃しておいて他の人間は警戒けいかいしないんだ?






「そこの人間は社会から嫌われている。 依頼があったのさ。 消してほしいと。 治安維持ちあんいじを守るお前がつっこむ必要はない。 だからお前はそこをどけ!」





 すると対象である彼はやけになって手を上げた。






「弱者は消えた方がいいと公式からの排他はいただ。 もう生きていてもいいこともないしお前ら強者きょうしゃだけでやってくれよ」





 なぜどいつもこいつも人を追い出そうとする。

 自殺したかつての友を俺は思い出していた。






「弱者だ? なんか前は無敵の人だっけ?そんなスラングに引っ張られるなよ! 俺が助けるから」





 インターネットにおどらされる毎日。

 俺にも経験がないわけじゃない。

 もし俺にも仲間たちがいなかったら?

 いや、仲間がただいればいいわけじゃない。






 かつてみた彼らの絶望への戦いを見ていなかったら?

 なんだかこの人は他人の気がしなかった。






「あんたみたいな強い人にはわからないさ」





「悪い。強くて」





 もらえるものはもらっとく。

 強いと言われて嫌な気持ちにならない人間はいな・・・この人がそうか。

 今後ひかえよう。





「あんた嫌なやつだ」





「落ち込む気持ちは俺にもあるんだ。悔しいならその嫌な気持ちをかかえたまま暮らす必要がないよう俺があんたを守る」





 マイワンワーズメンバーでまだ俺は未熟者みじゅくものだ。

 年齢もいちばん若いし戦績せんせきもそこまで多くないのも事実だ。





 こんなどこのだれかわからないおっさんを助けようなんて頭がおかしいと思われるかもしれない。





 だから世の中のそういった常識だがなんだかわからないルールと俺たちはたたかう。

 今回助けるこの人も大事なひとりとして守る!






「おっさんなんか助けてあんたの何になる?」






「今どき弱いものからねらって攻撃なんてどんだけ効率こうりつにしばられてるんだ? そうやって誰かに生かされてるから周りを見失う。 俺はもう洗脳せんのうに近い前提ぜんていにしばられるつもりはないってだけだ」






「助けてもらって悪いんだけど、人が見てる中で俺を弱いって言うのはやめてほしいなあ」






 かたなをもつ相手は〝よこしま〟の一員『穴刀あなーと』。






 やつは俺に笑いながら刀をむけてかまえている。







「このまま生きづらくなるだけの人間を減らすだけだというのに。 何が悪い?」







 俺はあらかじめもっていた武器をてばなし、相手とはちがうポーズで戦う意志を見せた。






「ただ守るべき者の前で強きをくじく。 マイワンワーズは自分の言葉で生き方を決める。 俺は決めた! 俺自身の今、この瞬間しゅんかんに!」





 穴刀あなーとと俺はひとめにつかない場所で戦いをおっぱじめた。





「くっ! 格闘技でもやっているのか? 武器がなくてもこれほどとは」





「おしゃべりしてていいのか? 油断ゆだんすんな!」






 戦いは続き、穴刀あなーとの技をよけて武器でやつの刀をさばき、拳で反撃した。




 あまり穴刀あなーとは戦闘を長引かせたくはないみたいだ。





 なにかを気にしている。

 それだけすきがあるのに俺の攻撃はなかなか通じなかった。





「悪い。 この依頼いらいは取り下げておく」





 穴刀あなーと息一いきひとつみだれず俺の攻撃をおしのけ、消えていく。





「くそ。 逃がしたか」






「助ける相手なんて選べるだろう。 おっさんなんて・・・」





 戦いをみていたらしい彼が俺に話しかけようとした時にネガティブなことを言っていたので口をとざした。





「助けが欲しいと言われれば助けに行く。 またご用命ようめいまってる。」






「俺は別に!」





 俺は彼を家へまで送り、バイクに乗って帰ろうとした。





「本当は死にたくなかった。 あなたの本音はだだれだった。 それだけだ」





 マイワンワーズの命令じゃない。

 自分の意思で彼を助けた。




 そして戦いはこれからも続くのかもしれない。

 俺は覚悟を決めることにした。

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