47~48:まぁいろいろあった

※何があったかはノクターン版で




 タイゾウダンジョン十階、激レア安全地帯こと「こづくりハウス」二度目の出現。

 初回の被害者となったカイとマッキーは、ウキウキで中に入ってしまい、困り果てた僕とリンと善後策を話し合う…という構図になるはずだった。

 が。

 まさかのリンに告白された。今ココ。


「えーと、……リン」


 僕は扉に背中を向け、真っ赤な顔のリンに迫られている。

 これって壁ドンって言うんだっけ? いや、そんなことよりも…。


「一方的に言わせてごめん。それで…、僕は…全然言葉が思いつかないから結論だけ言う。僕もリンが好きだ。強くて可愛いし、……ロダ村にいた頃はこんなきれいな子がいるなんて知らなかった」

「シモンも格好いい」

「リンの方がずっと可愛いから」

「格好いいのに…」


 そのまま何となく少し見つめ合う。

 そして……。


 僕はかなり背伸びして、それでも届かないからリンの頭をぐっと寄せて口づけをした。

 二人は流されて深い関係になるんじゃない。

 大貴族と田舎の孤児じゃ釣り合わないけど、今さらだ。


「シモン」

「んん…」


 唇を離そうと思ったら、ガッチリとリンに抑えつけられ動けない。

 力強い。まさか身体強化してる? というか、なぜキスしたまま? 顔近いよ?


「かっこいい。だから…」


 言いたいことを言って、さらに唇を押しつけてくるリン。


「大丈夫。……滅茶苦茶にして」


 …………。

 もしかして僕は、とんでもない選択をしたのでは?

 いや、余計なことは考えるな。

 考えるな。



 そんなわけで、僕とリンも「こづくりハウス」に入ることになった。

 二人で手をつないで、そしてせーので扉を開くと、小屋の中は…、前回と少し、いやかなり変わっていた。


「炊事場とトイレは変わってないな」

「うん。…シモン、かっこいい」

「お、おう」


 とりあえず、ここは安全地帯で僕たちはダンジョン探索の休息をとりに来た。

 その目的を果たすため、一通り小屋の内部を確認してまわった。

 そして、ただ小屋の中をうろうろする自分に、格好いい要素なんてかけらもないはずだが、無駄な指摘はしない。


 手をつないでるから分かる。

 リンは今、いっぱいいっぱいなんだ。

 冷静で頼れるパーティの要が、上の空で同じ台詞を繰り返すポンコツになるのも仕方ないし、それは先に勇気を出せなかった僕のせいだ。



 小屋の確認はすぐに終わる。

 二階建の小屋は、扉を開けて中に入ると土間があり、炊事場があって、その奥は仕切りのない板の間になっていたはずだった。

 今回も炊事場などの配置は一緒で、ただ板の間が一階も二階も壁で仕切られ、幾つかの個室に分けられている。

 そして、各部屋の入口には何かがぶら下がっていた。

 …………。

 樹里様、さすがに悪ふざけが過ぎると思う。


「えーと………、この中にいる?」

「たぶん」


 入口から一番近い個室の扉に「入ってます」と書かれた札がぶら下がっている。

 この文字を見た瞬間、前回間近で見せつけられたあれを思い出す。


 樹里様、「入ってます」ってそういう意味だよな。さすがに趣味悪すぎじゃないか…。


「音しないね」

「………確かに」


 まったく嫌がってないカイとマッキーが、喜び勇んで部屋に籠った。

 まだ入室して十分も経ってないはずだけど、きっともう始めているはずだが、音は全くしない。

 樹里様が保証した通り、防音は完璧のようだ。


 え?

 なぜ始めているはずって確信してるのかって?


 僕たちが最初に小屋に入っていたら、きっとそうなっていた。


「シモン。……隣?」

「いや、せめて……、二階にしよう」

「うん」


 ここは冒険者が命を守るための安全地帯。そう、僕たちはまず最初に安全確保のために行動するんだ…と、頑張って理性を保ってきた。

 手をつないでる…というより腕を絡めて大きな胸を押しつけて、いつ僕を押し倒すか分からないリンと一緒に。


 それが樹里様の悪意(好意)なのか、僕たちの関係の変化のせいなのかは分からないけど、小屋の中に一歩足を踏み入れた瞬間から、強烈な感情に襲われた。

 リンを抱きたい。

 リンと一つになって、そしてリンのすべてを奪いたい。

 むらむらして、他のことなんてどうでも良くなって…。


「シモン。私のシモン。……しーちゃん?」

「いや、せめて荷物は…」

「もうダメ。リンはもうダメ」

「ちょ、ちょ待て、…ぁぁああ」


 二階の部屋の扉を開けた次の瞬間に僕は押し倒された。

 なぁ、リン。

 せめて扉は閉めようぜ……。



※閉めて何をしたんでしょうねぇ


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る