第15話 新たな依頼
翌日、『戦乙女の歌』の四人は冒険者ギルドにやってきた。
目的は昨日の仕事……『ストーンバジリスク討伐』について依頼達成の報告をするためである。
「それじゃあ、私は受付嬢に報告に行ってくる。適当に時間を潰していてくれ」
「はーい。行こう。レーナ、ローナ」
「ん、次の依頼探す」
「高くて楽な仕事があれば良いんだけどね。そう上手くはいかないか」
アイシスとレーナ、ローナは依頼ボードを見て、次の仕事を探している。
エベリアは一人で受付まで行って、カウンターにストーンバジリスクの素材が入った袋を置いた。
「『戦乙女の歌』のエベリアだ。依頼達成の報告がしたい」
「ああ、エベリアさん。いらっしゃいませ」
顔見知りの受付嬢がやってきて、応対をしてくれる。
「遅いから心配しましたよ。何かありましたか?」
「いや、問題ない。ストーンバジリスクを巣穴から引っ張り出すのに手間がかかっただけだ」
「そうでしたか。それでは、こちらを確認させていただきます」
受付嬢が袋から素材を採りだして、ルーペを使って一つ一つ丁寧に確認をする。
「はい、確かにストーンバジリスクの素材で問題ありません。鱗と尻尾はかなり状態が良いですね。眼球は潰れてしまっていますが、こちらの毒腺は綺麗に残っていますし……高値で買い取らせていいただきます」
「ありがとう、助かるよ」
「いえいえ。それにしても……最近、絶好調ですね。『戦乙女の歌』は」
受付嬢がしみじみとした口調で言う。
「以前から丁寧な仕事で依頼達成率も高かったですけど、最近ではそれに加えて困難な依頼に果敢に挑戦するパワフルさが加わっている気がします」
「これも全部アイシスのおかげだよ。信頼できるアタッカーが入ってくれたおかげさ」
エベリアが振り返ってアイシスを探すと……彼女は依頼ボードを眺めるのに飽きたのか、他の冒険者に混じってテーブルでポーカーをしていた。
レーナとローナも一緒になってギャアギャアと騒いでおり、実に楽しそうである。
「アイシスが加入してきてから、あの二人も以前にも増して楽しそうになったからな。本当に彼女と出会えて幸運だったよ」
「そうですね。皆さんは本当に良いパーティーだと思います。冒険者さんの中には新しい仲間が入ると旧メンバーと諍いになる方達もいますから」
冒険者は戦いで金を稼ぐ仕事だけあって、我が強い人間が多い。
アイシスのように天真爛漫で誰とでも親しくなれる人間は、とても貴重なのである。
「ここだけの話ですが……レーナさんとローナさんは近いうち、Bランクへ昇格することが決まっています。アイシスさんもいずれAランクに上がることでしょう。もちろん、エベリアさんも」
「アイシスはともかくとして、私にはそれほどの実力はないが?」
「冒険者に求められるのは強さだけではありませんよ。あのアイシスさんの手綱を握り、コントロールできているのも評価に入っています」
冒険者は腕っぷしが命であったが、必ずしもそれだけではない。
個性的なメンバーを管理・監督して、依頼を十全に達成し続けているエベリアもまたギルドから高い評価を受けていたのである。
「ウチの新人は暴れ馬じゃないんだけどな……まあ、上のランクに上がれるのは素直に嬉しいよ。より上位の依頼が受けられたら、拠点購入の頭金も揃うからね」
「ああ、『戦乙女の歌』もいよいよホームを購入するんですね」
「ああ。ただ……全員の希望を反映させると、どうしても高値の物件になってしまってね? 資金調達にしばらくかかるかと話していたんだ」
「なるほど……あー、そうですか……」
受付嬢がしばし考えこむような仕草をする。
「実は……報酬は良いんですけど、ちょっと面倒な仕事が入っているんですよ。まだ依頼ボードには貼っていないんですけど……」
「面倒? そんなに難しい依頼なのかい?」
「まあ、そうですね。ただ……厄介と言ったのは依頼の内容というよりも場所でして……」
受付嬢が声を潜めて、エベリアの耳に唇を寄せて小声で言う。
「依頼してきたのがあのエイルーン帝国の貴族なんですよ。ほら、あの『見放された土地』の……」
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