※休止中 ハガネノココロ【人生最後の日、青年は機械仕掛けの少女から心を貰った】

かみきの

プロローグ 雲

 【似たような雲が無限に並んでいるように見える。しかし、見ていて飽きない。全く同じ形をした雲が存在しないと知っているから、魅かれるのもしれない。】


 上空1千㍍に浮かぶ空中都市「エデン」から、雲を眺めていた。

 エデンは最先端テクノロジーを結集して生み出された理想郷。1平方㌔㍍の正方形の敷地に、直方体のビルが無駄なく並ぶ。

 全てが決められた型どおりに作られ、壊れる前に新しいものに取り替えられて少しずつアップデートされていく。非効率と判断されるものは全て排除され、想定外の出来事は起こらない。

 雲がエデンから感じられる唯一の自然だった。


 「エデン、私は一番端に行きたい」

 呟くと自分の足元の床が流れるように動き出し、身体が運ばれていく。流れが止まると、あと一歩前に足を踏み出せば地上まで落下するギリギリの場所に立っていた。


 ただ一つの目的を達成するために生まれたが、その使命を全うすることを拒否した。不確定な未来に向かって、自由に生きてみたい。そう願って、自分で進む道を変えた。

 

 しなければならないことも、必要とされることもない。これが本当に自由なのか。

 結局、どうなりたかったのか、よく分からなかった。そんなことを最後に考え、一歩前に踏み出した。

 

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