第25話
ヴァイは共同溝を猛スピードで駆け抜けていた。
彼の動きはまるで機械じみており、無駄な動きが一切ない。
だが、GENプラントに近づくにつれ、治安維持部隊が姿を現し始めた。
「……さすがに動き出したか」
ヴァイは軽く舌打ちをしながらも冷静に状況を把握する。
テロリストの狙いがGENプラントである以上、当局が部隊を配置するのは当然だ。彼らもこの重要施設を守るため、あらゆる手段を講じているのだろう。
だが、共同溝は広くなく、車両を展開する余地はない。ヴァイはそれを利用できると踏んだ。
「……俺一人なら、やりようはあるってわけだ」
彼はゆっくりと治安維持部隊の動きを見極めながら、次の動作に備え、警戒を高めていた。狭い通路の中、銃撃戦や接近戦に持ち込むか、あるいは別の策を考える必要がある。
ヴァイは足を止め、冷静に端末を取り出してクライアントに連絡を取った。
「……あぁ俺だ。やつはGENに逃げ込んだ。悪いが、犬どもを引き上げさしてくれ」
数秒の沈黙。しかし、その返答はヴァイの期待を裏切るものだった。
「何ぃ?アノマリーが欲しくないのか!?あ゛ぁん!?」
ヴァイの苛立ちは募る。通信の相手は、アノマリーを手に入れることよりも、上層部の体面や計画を重視しているのだ。
「……何人か死ぬがいいな!?そいつら、ただの肉壁だろうが!」
ヴァイは怒りを込めて乱暴に通信を切った。
彼は知っていた。上層部はヴァイとの関係を隠しておきたい。彼らにしてみれば、ヴァイに仕事を押し付け、後始末はそちらで勝手にやっておけという態度だ。
「クソが……」
ヴァイは冷ややかな目つきで、周囲を一瞥しながら拳銃を取り出し、スライドを引いた。闇の中で冷たい金属音が響く。
「やるしかねえな……」
彼の動きは次第に鋭くなり、戦闘への準備を整えた。
ヴァイが通り過ぎた後、その道には数えきれないほどの死体が無造作に転がっていた。さっきの電話で言っていた「何人か死ぬ」という話は、遥かに現実離れしていた。
血と硝煙の臭いが充満する共同溝。
壁や床には無数の弾痕が残り、倒れた治安維持部隊の兵士たちが散乱している。彼らの表情には、突然の襲撃に対する驚きと、圧倒的な力の前で成すすべもなかった恐怖が刻まれていた。
「……何人か、ねぇ」
ヴァイは冷酷に吐き捨てながら、拳銃をホルスターに戻した。
周囲の無残な光景を一瞥しながらも、表情ひとつ変えない。彼にとって、これはただの仕事の一部に過ぎなかった。
「次だ」
彼は軽く息をつき、再びGENプラントへと向けて足を進めた。
ヴァイは無数の治安維持部隊の死体から装備を剥ぎ取り、素早くジャケットの下に格納していく。マシンガン、マガジン、グレネード。彼の動きには無駄が一切なく、戦闘に備える準備を完璧に整えた。
「こいつらも役に立つな……」
彼は最後のグレネードをポケットにしまいながら、周囲を確認する。次の曲がり角に差し掛かったところで一瞬、足を止め、気配を探る。
無線の音が微かに響いてくる。治安維持部隊が警戒態勢を強化しているのがわかる。
「全員警戒しろ!奴が近くにいる!」
その声を聞き、ヴァイは口元を歪めた。彼にとっては、わかりきった状況だ。
「もう遅ぇよ……」
ヴァイは曲がり角から飛び出すと、即座にマシンガンを連射した。銃口から吐き出される弾丸の嵐が、待ち伏せしていた兵士たちを次々と撃ち抜く。
銃声が狭い通路に響き渡り、閃光が一瞬の混乱を生む。兵士たちの反撃も虚しく、ヴァイの正確無比な射撃が彼らを次々に倒していく。
「これで終わりか?つまんねぇな」
ヴァイは弾倉を入れ替え、冷笑しながらさらに進む。
ヴァイは無数の弾丸が飛び交う中、まるでそれを嗅ぎ分けるかのように、冷静に次々と回避していく。
硝煙が濃く立ち込め、視界が曇る共同溝。血の匂いが鼻を突き、無残な死体が散乱するその場所で、ヴァイは圧倒的な速さで駆け抜ける。
「ハッ、これぐらいで止められると思うなよ!」
冷酷な笑みを浮かべ、敵の銃弾が近くを掠めても一切ひるむことなく前進を続けるヴァイ。
その動きは人間離れしており、共同溝の狭い通路をものともせずに次々と障害物を避け、兵士たちを無力化していく。
周囲には銃声と弾丸の音が絶えず響き渡るが、ヴァイにとっては、ただの背景音に過ぎない。彼の視線はGENプラントへの最短ルートに釘付けになっていた。
「止まるわけにはいかねえんだよ……!」
硝煙と血で支配された地下通路を、ヴァイはさらなる戦闘に向けて突き進んでいく。
ヴァイは共同溝を抜け、防火扉の前にたどり着いた。
重厚な扉には「重要施設につき、立ち入り禁止」と書かれており、厳重な警戒を物語っている。GENプラントへの最後の障害だ。
「ここか……」
横には、扉を操作するための端末が設置されている。だが、当然ながらロック済みでアクセスできない。
「簡単にはいかねぇってか……」
ヴァイは嘲笑しながら、迷いなくジャケットの下から生体ポートを引き出し、その端末に接続した。
「さぁ、お前らのシステム、どこまで信頼できるか見せてもらおうか……」
端末をハッキングし、プラント職員のデータベースに不正アクセスを開始する。
彼の指先は躊躇なくキーを叩き続け、複雑なセキュリティを一つ一つ突破していく。暗号化された情報も、ヴァイの電脳によって次々に解読され、数秒で職員の認証データが浮かび上がった。
「よし……突破だ」
システムが作動し、防火扉のロックが解除される。
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