依存と共感性の構造の光

紙の妖精さん

第1話

優海は緊張と期待が入り混じる心持ちで、玄関のドアを開けた。今日から中学校が始まる。お兄さんの司が隣にいてくれるから、少しだけ安心する。


「行ってきます、優海」と、司が優しく微笑んだ。「頑張れ。君ならできるよ。」


その言葉が、優海の背中を押す。心臓がドキドキと高鳴り、手のひらは汗でじっとりと湿っていた。しかし、司の優しい目が彼女を見守っているのを感じると、少しずつ不安が和らいでいく。


学校へ向かう道すがら、優海は周囲の景色に目を向ける。新しい友達や未知の経験が待っているかもしれないと思うと、胸が高鳴る。


校門をくぐると、大勢の生徒たちが賑やかに話し合い、笑っている。その光景を見て、優海は自分がその一員になれるのか不安を感じる。「やっぱり、兄さんがいないと無理かな」と心の中でつぶやく。


「大丈夫、一緒に行こう」と司が優海の手を軽く引く。彼の存在が、心の支えとなり、彼女の足取りは少し軽くなる。


教室に入ると、初めての風景に圧倒される。みんなが楽しそうに話している中で、優海は一人、席に着く。視線がちらちらと周りに向く。友達と呼べる存在はまだいないが、これからの期待感が彼女の心を満たしていく。


授業が始まると、優海は一生懸命に先生の話を聞く。周囲の子たちが笑ったり、質問をしたりする様子を見て、少しずつ彼女の心に変化が生まれる。「私も、話してみたい」と思うようになった。


休み時間になると、勇気を振り絞ってクラスメイトに声をかける。「こんにちは、私、優海です。」初めはぎこちないが、相手の笑顔を見て心が少しほぐれる。彼女は自分の存在が認められたように感じた。


午後、司が迎えに来ると、優海は嬉しそうに駆け寄った。「兄さん、今日、クラスメイトと話せたよ!」


「それはすごいじゃないか。よく頑張ったな。」司は優海の頭を優しく撫でる。


優海の心は、少しずつ温かくなっていく。新しい世界が開けてきたことを実感し、彼女の中で依存の感情が少しずつ薄れていくのを感じる。


「これからも、頑張るね。」優海は司にそう言って、彼を見つめた。


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