第19話 その男、バランスにつき -3-

話し終えると、もう一人は「近藤さんは、ほんとに面白いこと考えるなー」と言った。

普通はそうである。

これは僕の話なので、多くの人にとって他人事なのだ。

ただ、梅ちゃんの顔つきは変わっていた。

具体的なことをまだ話していないのに、何をすればその未来にたどり着くことができるかを考えているのを感じる。

彼の中に、もう一つの道が見えたのかもしれない。

行く先は違うタイプの絶望かもしれないが、まだ終わりが見えていないという意味ではこちらには未来がある。


帰り道で梅ちゃんを会社に誘った。

子供もいるので、いったん持ち帰り検討するとのことになった。

僕のやれることは終わった。

あとは彼次第である。


年明け。

梅ちゃんから今のプロジェクトのキリがつく2023年の7月から合流する旨の連絡があった。

こうして、K-modelは緩やかに船出をすることになった。

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