月が綺麗ですね

進藤 進

第1話 温もり

ヒールと革靴の音が響いている。

寄り添う二人は互いの温もりを感じながら、石畳の道をゆっくりと歩いていた。


公園の中央に人工の池がある。

ライトアップされた噴水が幻想的に色を変えていく。


悟と裕子はベンチに座ることなく眺めていた。

裕子は久しぶりに組んだ男の腕をギュッとしながら、幸せな時間を噛みしめている。


悟に初めて抱かれてから三年の月日が過ぎた。

その前の三年間、男を想い続けていたから合わせて六年になる。


今更ながら、時の速さに驚いている。

だけど、幸せな時間を過ごせたと思った。


秘めた想いを隠し続けた三年間。

想いを打ち明け合い、愛し合った三年間。


どれも裕子にとっては夢のような時間だった。


(だけど・・・)

冷静な自分がブレーキをかける。


所詮、結ばれない二人なのだ。


様々な理由がある。

様々な想いがある。


無意識に男の腕を抱きしめる。

温もりが消えてしまわないように。

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